「バターとマーガリン、体にいいのはどっち?」「マーガリンのトランス脂肪酸はどれほど危険なのか?」——スーパーで毎日目にしながら実際のところよくわからないまま選んでいる方は多くいます。この記事では、根本的な違いを栄養成分レベルで整理したうえで、トランス脂肪酸の実際のリスクとスーパーでの具体的な選び方まで解説します。

01 ORIGINSバターとマーガリンの根本的な違い:原料と製造方法

見た目・カロリーがほぼ同じでも「何からどうやって作られているか」が栄養成分と健康影響を決定的に変えます。

BUTTER / バター
天然の乳製品・数千年の食用歴史
  • 原料:牛乳から分離した生クリーム
  • 製造方法:生クリームを撹拌(チャーニング)して乳脂肪分を固める。加工工程がシンプル
  • トランス脂肪酸の由来:天然(バクセン酸・CLA)。工業的なものとは分子構造が異なりリスクが低い
  • ビタミン:天然のA・D・E・K2を含む
  • 高温調理:飽和脂肪酸が多く酸化しにくいため◎
MARGARINE / マーガリン
植物油の加工品・19世紀のバター代替として開発
  • 原料:植物油(大豆油・菜種油・コーン油など)
  • 製造方法:常温で固形にするために「水素添加(硬化)」という化学工程を経る
  • トランス脂肪酸の由来:水素添加工程で生成(工業的)。硬いスティックタイプほど多い
  • 現在の主流:「ソフトタイプ・ファットスプレッド」——水素添加を大幅に減らした製法に切り替わっている
  • 高温調理:多価不飽和脂肪酸が多く酸化しやすいため✕
ℹ️ 「マーガリン=危険」という認識の背景と現状:
1970〜90年代のスティック型マーガリンはトランス脂肪酸が7g/100g以上含まれるものもありました。現在の日本市場の主流は「ソフトタイプ・ファットスプレッド」であり、製法改善によりトランス脂肪酸量は0.3〜2g/100g程度に大幅削減されています。ただし「部分水素添加油脂」を使用した製品は今も存在するため、ラベルの確認が不可欠です。

02 NUTRITION栄養成分の比較:脂肪酸の種類と体への影響

カロリーはバター約745kcal・マーガリン約758kcal(100gあたり)でほぼ同等です。1日の使用量は10〜20g程度なので実際のカロリー差は1〜2kcal以下。重要なのはカロリーではなく「どんな脂肪酸が何g入っているか」です。

脂肪酸の種類と比率の比較(100gあたり)

成分バターマーガリン(ソフト型)体への主な影響
飽和脂肪酸約50.5g約25.2gLDLを上げるが酸化しにくく高温調理に強い
一価不飽和脂肪酸約21.0g約37.4gLDLを下げ心血管に有益とされる
多価不飽和脂肪酸約3.0g約15.7gLDLを下げるが酸化しやすく高温加熱に不向き
トランス脂肪酸約1.8g(天然由来)0.3〜7.0g(製品による大差)工業的なものはLDL上昇・HDL低下の二重リスク
ビタミンK2約15μg(天然)ほぼ0骨のカルシウム代謝・動脈石灰化の抑制
ビタミンA約520μg(天然)0〜1800μg(添加)バターは天然由来で体内利用効率が高い

※日本食品標準成分表2020年版をもとに作成。マーガリンは製品により大幅に異なります。

🦴 ビタミンK2(バターにのみ含有):骨のカルシウム代謝・動脈石灰化の抑制に関わる脂溶性ビタミンで、マーガリンにはほぼ含まれません。天然ビタミンA・Dはバターに含まれますが、マーガリンは製造過程でビタミンが失われるため人工的に添加されています。

03 TRANS FAT RISKトランス脂肪酸とは何か:リスクの実態と「自分への当てはめ方」

工業的トランス脂肪酸の健康リスク

RESEARCH EVIDENCE

Mozaffarian et al.(N Engl J Med, 2006)は、工業的トランス脂肪酸がLDLコレステロール(悪玉)を上げながら同時にHDLコレステロール(善玉)を下げる二重の作用があり、飽和脂肪酸より心血管疾患リスクへの影響が大きいことを示しました(PMID:16611951)。WHO(2023)はトランス脂肪酸の摂取を1日のエネルギー摂取量の1%未満(2000kcalの食事で約2.2g未満)に抑えることを推奨しています。

⚠️ 天然トランス脂肪酸と工業的トランス脂肪酸は別物:牛・羊などの反芻動物の乳・肉に含まれるバクセン酸・CLAは天然トランス脂肪酸で、工業的なものとは分子構造が異なり健康リスクが低いと評価されています。バターのトランス脂肪酸(約1.8g/100g)はこの天然由来です。

自分の摂取量を把握する:具体的な試算

旧型
マーガリン
旧来のスティックタイプ(トランス脂肪酸7g/100g製品)を1日20g使用
摂取量:約1.4g → WHO目標値(2.2g)の64%。毎日使えば食事全体での累積が問題になりやすい
⚠ WHO目標値に近い
現行
ソフト型
現在市販の低トランス型ソフトマーガリン(0.3g/100g製品)を1日20g使用
摂取量:約0.06g → WHO目標値の3%以下。問題なし
✅ WHO目標値の3%以下
バター
天然
バターを1日15g使用(天然トランス脂肪酸1.8g/100g)
摂取量:約0.27g → WHO目標値の12%以下。天然由来のため健康リスクは低い
✅ 天然由来・リスク低
🍟 実際の主要摂取源:自宅でのバター・マーガリン使用量より、揚げ物・市販のパイ・クッキー・スナック菓子・ファストフードに含まれる量のほうが大きいケースが多いです。日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は総エネルギーの約0.3〜0.6%でWHOの目標値(1%未満)を下回っており、平均的な食生活では過度な心配は不要とされています。
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04 HOW TO CHOOSEスーパーで今日から実践できる選び方:商品タイプ別の整理

商品タイプ別の特徴と向き不向き

商品タイプ特徴向いている用途注意点
有塩バター最も一般的。風味豊かパンに塗る・炒め物の仕上げ塩分あり。製菓には無塩を使う
無塩バター塩分なし製菓・料理全般傷みやすいため早めに使い切る
発酵バター乳酸菌発酵で風味が強いパンに塗る・料理の風味づけ価格が高め。少量で満足感あり
グラスフェッドバター牧草飼育牛の乳由来。K2・CLA高めパンに塗る・低温調理一般バターの1.5〜3倍の価格
ソフトマーガリン(低トランス型)塗りやすい。低トランス化済みパンに塗る・非加熱用途加熱調理不可。「部分水素添加油脂不使用」を確認
ファットスプレッド脂質80%未満・カロリー低めパンに塗るだけ水分多く調理不可。量が増えやすい
オリーブオイルスプレッドオリーブ油配合・一価不飽和脂肪酸多めパンに塗る・低温調理風味が独特。製品によりトランス脂肪酸確認要

マーガリン・スプレッドのラベルで必ず確認する2点

🔍
確認点①:「部分水素添加油脂」が原材料にあれば避ける
旧来の製法でトランス脂肪酸が多い可能性がある唯一の見分け方。「大豆油、菜種油、パーム油」だけなら問題なし。「硬化油」「部分硬化油」も同様に注意。
原材料名の一番最初に書かれている油の種類を確認する習慣をつける
⚠️
確認点②:「トランス脂肪酸:0g」表示の注意点
日本では100gあたり0.5g未満を「0g」と表記できるルールがあります。「0g=完全ゼロ」ではなく、1日20〜30g使えば0.1〜0.15g程度摂取することになります。

バターのラベルで確認するポイント

🏷️ バターのラベルチェック:
理想:原材料が「生乳(または乳脂肪)のみ」。「乳化剤」「増粘剤」が入るものは加工度が高い
食塩不使用:製菓・塩分管理が必要な方向け
有塩:食卓用・パンに塗る用途向き
グラスフェッド表示:牧草(グラス)100%飼育牛の乳由来でK2・CLAが高め

05 PRACTICAL USEダイエット・体組成改善中の具体的な使い方

1日10〜15gとはどの程度の量か

🍞
食パン1枚に塗るバター
約5〜8g
🍳
炒め物1回分(フライパン)
約5〜10g
🍝
パスタやソースの仕上げ
約5g
🥚
スクランブルエッグ1人分
約5g
🥣
大さじ1杯(計量スプーン)
約12〜15g
🌿
朝食トースト+夕食炒め物
合計10〜15g

目的別の推奨

📉
体脂肪を減らしたい場合
バター・マーガリンともに1日10g以内に抑える。調理にはオリーブオイルを主体にしてバターは風味づけに少量使う方法が脂質管理しやすい。
オリーブオイル(一価不飽和脂肪酸豊富・高温調理に比較的強い)を基本調理油にするのがおすすめ
💪
筋肉をつけながら体組成改善をしたい場合
ホルモン合成に脂質が必要なため極端な制限は逆効果。バターを1日10〜15gの範囲で使い、天然ビタミンK2・Aを食事から摂るほうが合理的。
🩺
コレステロールが高めと言われている場合
バターの飽和脂肪酸が影響することがある。医師・管理栄養士に相談のうえ量を調整する。マーガリンを選ぶ場合は低トランス型ソフトタイプに限定。
食事由来コレステロールより飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の総量管理が優先
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よくある質問

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バターはコレステロールが高いから食べないほうがいいですか?
バター100gのコレステロールは約210mgですが、1回の使用量は5〜10g程度です。食事由来のコレステロールが血中コレステロールに与える影響は以前考えられていたほど大きくなく、むしろ飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の摂取量のほうが影響が大きいとされています。LDLコレステロールが高い方は医師・管理栄養士にご相談ください。
子どもにはバターとマーガリンどちらがいいですか?
成長期の子どもには天然の脂溶性ビタミン(A・D・E・K2)を含むバターを少量使うことが栄養面で優れています。現在の日本市場のソフトマーガリンはトランス脂肪酸が大幅に削減されていますが、「部分水素添加油脂不使用」を原材料で確認することが安心の目安です。
「植物性だからマーガリンのほうが健康的」は本当ですか?
植物性であっても水素添加による工業的トランス脂肪酸が含まれれば健康リスクは高まります。「植物性=健康的」という図式は成立しません。重要なのは原料の由来ではなく含まれる脂肪酸の種類と量、そして使用量です。
マーガリンは完全に避けるべきですか?
旧来のスティックタイプは工業的トランス脂肪酸が多く避けるべきですが、「部分水素添加油脂不使用」のソフトマーガリン・ファットスプレッドは現在トランス脂肪酸が大幅に削減されており、パンに塗る用途であれば選択肢として成立します。ただし加熱調理には使わないことが重要です。
毎日バターを使っていますが食べすぎでしょうか?
1日の使用量が10〜15g(大さじ約1杯)以内であれば通常の食事の中で問題になりにくい量です。それ以上使っている場合は脂質・カロリーが過剰になりやすいため、調理にはオリーブオイルを主体にしてバターを風味づけに限定する方法が量を自然に減らせます。

まとめ

バターとマーガリンの選択は「どちらが絶対に良い」ではなく、「何をどれくらい使うか」の管理が健康影響を最も左右します。製造工程の違いを理解して選ぶことが、日々の食事の質を上げる第一歩です。

  • バターは天然の乳製品で数千年の食用歴史。マーガリンは植物油の加工品で水素添加工程でトランス脂肪酸が生成される
  • 工業的トランス脂肪酸はLDL上昇・HDL低下の二重リスク(Mozaffarian et al., N Engl J Med, 2006)。WHOは1日エネルギーの1%未満を目標値に設定(2023)
  • バターのトランス脂肪酸は天然由来(バクセン酸・CLA)でリスクが低く、天然ビタミンK2・A・Dが含まれる
  • マーガリンを選ぶ場合は「部分水素添加油脂不使用」のソフトタイプに限定し加熱調理には使わない
  • 「トランス脂肪酸:0g」表示は100gあたり0.5g未満の意味——完全ゼロではない
  • 1日の使用量10〜15g(大さじ1杯)が過剰摂取を防ぐ目安。調理にはオリーブオイルを主体にしてバターは風味づけに限定する方法が管理しやすい
  • トランス脂肪酸の主要摂取源は自宅のバター・マーガリンより揚げ物・洋菓子・スナック菓子のほうが大きいケースが多い
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参考文献・科学的根拠

  1. 1Mozaffarian D, Katan MB, Ascherio A, Stampfer MJ, Willett WC. “Trans fatty acids and cardiovascular disease.” N Engl J Med. 2006;354(15):1601-1613. doi:10.1056/NEJMra054035. ハーバード大学。工業的トランス脂肪酸がLDLコレステロールを上げHDLコレステロールを下げる二重の心血管リスクを持つことを示した包括的レビュー。トランス脂肪酸のリスク評価の根拠として参照。 PMID:16611951
  2. 2World Health Organization. Saturated fatty acid and trans-fatty acid intake for adults and children: WHO guideline. Geneva: WHO; 2023. ISBN:9789240073630. 飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の1日摂取目標(トランス脂肪酸:総エネルギーの1%未満)の根拠として参照。 WHO公式ページ
  3. 3厚生労働省.「トランス脂肪酸に関するQ&A」. 厚生労働省; 2016年(参照2026年). 日本人のトランス脂肪酸平均摂取量(総エネルギーの約0.3〜0.6%)・「0g表示」ルールの解説・食品中のトランス脂肪酸含有量の根拠として参照。 厚生労働省(トランス脂肪酸Q&A)
  4. 4文部科学省.「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」. 文部科学省; 2020年. バター・マーガリン・ファットスプレッドの脂肪酸組成・ビタミン含有量・カロリーの根拠として参照。 文部科学省(食品成分表)