THE FITNESSで18年間お客様の食事を見てきた中で、「脂質をゼロにすればダイエットが成功する」と信じて肌荒れ・便秘・ホルモンバランスの乱れに悩む方を多く見てきました。脂質はカロリーが高い(1gあたり9kcal)ため制限対象になりがちですが、「種類」を正しく選べばダイエットの強い味方になります。この記事では植物性脂質と動物性脂質の違いを整理し、ダイエット中に選ぶべき脂質の種類と摂り方を科学的根拠とともに解説します。

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PLANT FATS植物性脂質とは|種類・特徴・含まれる食品

不飽和脂肪酸とは:植物性脂質の主成分

植物性脂質の主成分は不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸は分子構造に「二重結合」を持つ脂肪酸で、常温で液体の状態です(オリーブオイル・亜麻仁油など)。二重結合の数と位置によってオメガ3・オメガ6・オメガ9に分類され、それぞれ異なる生理作用を持ちます。

🌿 OMEGA-3(α-リノレン酸 / ALA)
亜麻仁油・えごま油の特徴と働き
抗炎症作用・血中脂質の改善に関与する必須脂肪酸です。体内でEPA・DHAに変換されますが、変換率は5〜10%と低いため、植物性ALAだけではEPA・DHAの十分な摂取は困難です。加熱に弱いため非加熱で使用してください。
主な食品:亜麻仁油・えごま油・チアシード・くるみ
🌿 OMEGA-6(リノール酸)
サラダ油・大豆油の特徴と摂りすぎリスク
細胞膜の構成に必要な必須脂肪酸ですが、現代の食生活では過剰摂取になりやすく、オメガ3とのバランスが崩れると炎症が促進されます。理想的なオメガ6:オメガ3の比率は2〜4:1ですが、現代の日本人は10〜20:1とされています。サラダ油・大豆油の使用量を減らし、オメガ3を意識的に増やすことが重要です。
主な食品:サラダ油・大豆油・コーン油・ひまわり油・マヨネーズ
🫒 OMEGA-9(オレイン酸)
オリーブオイルがダイエット向きな理由
オメガ9は必須脂肪酸ではありませんが、LDLコレステロールの低下・抗酸化作用が報告されています。加熱にも比較的強く、調理油として最もバランスの良い選択肢です。エクストラバージンオリーブオイルにはポリフェノールも含まれます。
主な食品:オリーブオイル・アボカド・アーモンド・マカダミアナッツ
🥥 MCTオイル(中鎖脂肪酸)
即効性エネルギー源としての位置づけ
MCT(Medium Chain Triglycerides)は消化吸収が速く、肝臓で直接代謝されるため体脂肪として蓄積されにくい特徴があります。ただしカロリー自体は高い(1gあたり約8.3kcal)ため、「MCTオイルを摂れば痩せる」わけではありません。コーヒーに小さじ1杯加える程度が目安です。
主な食品:MCTオイル(サプリメント)・ココナッツオイル

ANIMAL FATS動物性脂質とは|種類・特徴・含まれる食品

🥩 飽和脂肪酸
動物性脂質の主成分と体への影響
飽和脂肪酸は分子構造に二重結合を持たない脂肪酸で、常温で固体の状態です(バター・ラード・牛脂など)。Sacks et al.(2017; PMID:28620111)のAHA Presidential Advisoryでは、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸(特に多価不飽和脂肪酸)に置換することでCVDリスクが約30%低減することが報告されています。完全に避ける必要はありませんが、摂取量を総カロリーの7%以下に抑えることが推奨されます。
主な食品:バター・ラード・牛脂・鶏皮・ベーコン・チーズ
🐟 動物性オメガ3(EPA・DHA)
魚油が持つ抗炎症・回復サポート効果
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は魚に含まれる動物性オメガ3脂肪酸であり、植物性ALA(亜麻仁油等)からの変換率が低いため、魚からの直接摂取が最も効率的です。Philpott et al.(2019; PMID:30484702)のレビューでは、オメガ3が筋肉回復の促進や筋損傷の軽減と関連する可能性が示されています。Calder(2017; PMID:28900017)はオメガ3の抗炎症メカニズムを詳細にレビューしています。脂肪燃焼をサポートする食材の一覧はスーパーフード10選はこちらを参照してください。
主な食品:サーモン・サバ・イワシ・マグロ・サンマ・フィッシュオイルサプリ
🧈 バターとラードの違い
避けるべき脂質とそうでない脂質
バターもラードも飽和脂肪酸が多い動物性脂質ですが、少量を風味づけに使う程度であれば健康への影響は限定的です。問題なのは「量」であり、バターを大量に使った料理やラードで揚げた料理を毎日食べることです。調理油としてはオリーブオイルへの置換が推奨されます。
バター:飽和脂肪酸 約50% / ラード:飽和脂肪酸 約40% / オリーブオイル:飽和脂肪酸 約14%

COMPARISON植物性脂質と動物性脂質の違いを比較する

比較項目植物性脂質動物性脂質
主な脂肪酸不飽和脂肪酸(オメガ3・6・9)飽和脂肪酸(+魚はEPA・DHA)
常温での状態液体(油)固体(脂)※魚油は液体
炎症への影響オメガ3→抗炎症 / オメガ6過多→炎症促進飽和脂肪酸→炎症促進 / EPA・DHA→抗炎症
心血管リスク不飽和脂肪酸への置換でCVDリスク約30%低減飽和脂肪酸の過剰摂取はLDLコレステロール上昇
ダイエットへの影響オメガ9・MCT→脂肪蓄積しにくいEPA・DHA→脂肪燃焼サポート / 飽和脂肪酸→脂肪蓄積促進
推奨される摂り方オリーブオイル中心+亜麻仁油を生食週2〜3回の魚食+肉の脂身を控えめに
🔬 研究データが示す「どちらがより有用か」

Mozaffarian et al.(2010; PMID:20351774)の8つのRCTメタ分析では、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に5%エネルギー分置換するとCHDリスクが10%低減することが確認されています。一方、Micha & Mozaffarian(2010; PMID:20354806)のレビューでは、飽和脂肪酸を炭水化物に置換しても心血管リスクの改善は見られないことが示されています。つまり「脂質を減らす」こと自体ではなく「何に置き換えるか」が重要です。

糖質・脂質どちらで太りやすいかは体質によって異なります。自分の体質タイプを確認するには糖質・脂質どちらで太るかの体質診断はこちらを参照してください。

PRACTICEダイエット中に実践する脂質の選び方・摂り方

1日の脂質摂取量の目安

ダイエット中でも総カロリーの20〜30%を脂質から摂取することが推奨されます。体重60kgの方がダイエット中に1日1,600kcalを摂取する場合、脂質は約35〜53g/日が目安です。このうち飽和脂肪酸は総カロリーの7%以下(約12g以下)に抑え、不飽和脂肪酸(特にオメガ3とオメガ9)で残りを補います。女性向けの栄養バランスについては女性に必要な栄養素ガイドはこちらを参照してください。

調理油の選び方:加熱調理・生食・用途別

【加熱調理】エクストラバージンオリーブオイル(発煙点約180℃)またはアボカドオイル(発煙点約250℃)。【生食・ドレッシング】亜麻仁油・えごま油。【避けるべき】サラダ油(オメガ6過多)・マーガリン(トランス脂肪酸の可能性)。家庭の調理油をオリーブオイルに切り替えるだけで、日常的なオメガ6の過剰摂取を大幅に削減できます。

避けるべき脂質:トランス脂肪酸と加工食品

トランス脂肪酸は「最も避けるべき脂質」です。植物油を水素添加して固形化する過程で生成され、LDLコレステロールを上昇させ、HDLコレステロールを低下させるダブルの悪影響があります。マーガリン・ショートニング・加工菓子・ファストフードの揚げ物に多く含まれます。ダイエットの仕組みを科学的に理解したい方はダイエットの仕組みの科学はこちらを参照してください。

脂質摂取のタイミング:運動前後での考え方

脂質は消化に時間がかかるため、トレーニング直前(60分以内)は避け、トレーニング2時間以上前の食事に含めるのが基本です。トレーニング後は糖質+タンパク質の摂取を優先し、脂質は次の食事で摂取してください。スムージーに脂質を取り入れたい場合は栄養補給スムージーレシピはこちらを参照してください。

脂質の選び方を含む食事設計から
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よくある質問(FAQ)

植物性脂質だけ摂れば健康的に痩せられますか?
いいえ、植物性脂質だけでは不十分です。魚に含まれるEPA・DHAは植物性ALA(亜麻仁油等)からの変換率が5〜10%と低いため、魚からの直接摂取が推奨されます。植物性脂質と魚の脂質をバランスよく組み合わせることが理想的です。
魚とサプリメント、オメガ3はどちらから摂るべきですか?
まず食事(サーモン・サバ・イワシなどの青魚)からの摂取を優先してください。魚にはEPA・DHAに加えてタンパク質・ビタミンDも含まれます。週2〜3回の魚食で十分な量を確保できます。魚が苦手な方はフィッシュオイルサプリで補助してください。
ダイエット中は脂質をゼロにした方がいいですか?
いいえ、推奨しません。脂質はホルモン合成・細胞膜の構成・脂溶性ビタミンの吸収に不可欠です。ダイエット中でも総カロリーの20〜30%を脂質から摂取し、オメガ3・オメガ9中心に選ぶことが重要です。
亜麻仁油・えごま油の正しい使い方を教えてください
亜麻仁油・えごま油はオメガ3が豊富ですが熱に非常に弱いため、加熱調理には使えません。サラダのドレッシング・味噌汁にかける・ヨーグルトに混ぜるなど非加熱で使ってください。開封後は冷蔵保存し、1〜2ヶ月で使い切ることを推奨します。1日小さじ1〜2杯が目安です。

まとめ|植物性・動物性脂質を正しく選んでダイエットに活かす

脂質は「量」だけでなく「種類」が重要です。植物性脂質と動物性脂質にはそれぞれ異なる特徴があり、正しく選ぶことでダイエットと健康の両立が可能になります。調理油をオリーブオイルに切り替え、週2〜3回の魚食でEPA・DHAを確保し、トランス脂肪酸を避ける——この3つを実践するだけで脂質の質は大きく変わります。

  • 飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置換でCVDリスク約30%低減(Sacks et al., 2017)
  • 5%エネルギー分の置換でCHDリスク10%低減——ただし炭水化物への置換は無効(Mozaffarian et al., 2010; Micha & Mozaffarian, 2010)
  • オメガ3は抗炎症作用を持ち、筋肉回復を促進する可能性がある(Calder, 2017; Philpott et al., 2019)
  • 植物性ALA→EPA・DHA変換率は5〜10%のため魚からの直接摂取が効率的
  • ダイエット中でも総カロリーの20〜30%は脂質から摂取する
  • トランス脂肪酸(マーガリン・加工菓子)は最も避けるべき脂質

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参考文献・科学的根拠

  1. 1Sacks FM, Lichtenstein AH, Wu JHY, et al. “Dietary Fats and Cardiovascular Disease: A Presidential Advisory From the American Heart Association.” Circulation. 2017 Jul 18;136(3):e1-e23. doi:10.1161/CIR.0000000000000510. 飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸(特に多価不飽和脂肪酸)に置換することでCVDリスクが約30%低減することを示したAHA Presidential Advisory。脂質選択の根拠として参照。 PMID:28620111
  2. 2Calder PC. “Omega-3 fatty acids and inflammatory processes: from molecules to man.” Biochem Soc Trans. 2017 Oct 15;45(5):1105-1115. doi:10.1042/BST20160474. オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)の抗炎症メカニズムを分子レベルからヒトの臨床データまで包括的にレビュー。オメガ3の生理作用の根拠として参照。 PMID:28900017
  3. 3Philpott JD, Witard OC, Galloway SDR. “Applications of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for sport performance.” Res Sports Med. 2019 Apr-Jun;27(2):219-237. doi:10.1080/15438627.2018.1550401. オメガ3がスポーツパフォーマンス・筋肉回復・筋損傷予防に与える効果をレビュー。動物性オメガ3(EPA・DHA)の運動効果の根拠として参照。 PMID:30484702
  4. 4Mozaffarian D, Micha R, Wallace S. “Effects on coronary heart disease of increasing polyunsaturated fat in place of saturated fat: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” PLoS Med. 2010 Mar 23;7(3):e1000252. doi:10.1371/journal.pmed.1000252. 8つのRCTのメタ分析で、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に5%エネルギー分置換するとCHDリスクが10%低減することを確認。脂質置換の効果の根拠として参照。 PMID:20351774
  5. 5Micha R, Mozaffarian D. “Saturated fat and cardiometabolic risk factors, coronary heart disease, stroke, and diabetes: a fresh look at the evidence.” Lipids. 2010 Oct;45(10):893-905. doi:10.1007/s11745-010-3393-4. 飽和脂肪酸の心血管代謝リスクへの影響を置換栄養素別にレビュー。多価不飽和脂肪酸への置換が最も効果的であり、炭水化物への置換は効果がないことを整理。脂質の置換先の選び方の根拠として参照。 PMID:20354806