⚠️ 本記事は一般的な栄養情報です。脂質異常症・心臓病・家族性高コレステロール血症などの診断を受けている方は、食事変更前に必ず主治医にご相談ください。

「卵は1日1個まで」「コレステロールが高いから食べてはいけない」——こうした考えを持っている方は少なくありません。しかし日本では2015年に厚生労働省がコレステロールの摂取上限を食事摂取基準から撤廃しており、食事由来のコレステロールが直接血中コレステロールを決めるという単純な関係は科学的に否定されています

01 HISTORY「卵はコレステロールが危険」という通説はどこから来たのか

100年前の動物実験が起源だった

この通説の起源は1900年代初頭にさかのぼります。ロシアの研究者Anichkovがウサギにコレステロールを大量に与えたところ動脈硬化が生じたという動物実験が、「コレステロール=動脈硬化の原因」という考えの出発点となりました。しかしウサギは草食動物でありコレステロール代謝が人間と大きく異なるため、この結果を直接人間に当てはめることはできません。その後の研究によって、この単純な因果関係は人間には当てはまらないことが徐々に明らかになっていきます。

2015年に厚生労働省がコレステロール摂取上限を撤廃した背景

日本では長らく「食事性コレステロールの摂取上限(男性750mg/日未満、女性600mg/日未満)」が設けられていましたが、2015年版の食事摂取基準でこの上限が撤廃されました。撤廃の理由は、食事性コレステロールの摂取量と心血管疾患リスクの関連について科学的根拠が十分でないと判断されたためです。この方針は2020年版でも維持されており、「コレステロールは目標量を設定しない」というスタンスが続いています(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)。

02 CHOLESTEROL SCIENCE食事から摂るコレステロールと血中コレステロールの関係

体内コレステロールの約70〜80%は肝臓が合成する

血中コレステロールの大部分(約70〜80%)は食事からではなく、肝臓が体内で合成しています。体内のコレステロールは細胞膜の構成・ステロイドホルモン(エストロゲン・テストステロン等)の材料・胆汁酸の原料として必要不可欠な物質です。身体は常にコレステロールを必要としており、食事からの摂取が少ない場合は肝臓がより多く合成します。

食事由来コレステロールが増えると肝臓の合成が減る調整機能

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フィードバック調整(コレステロールホメオスタシス)
食事からのコレステロール摂取が増えると、肝臓はLDL受容体を増やし血中から回収する量を増やすと同時に、体内合成量を減らして血中コレステロール濃度を一定の範囲に保とうとします。このフィードバック機構により、食事からコレステロールを多少多く摂っても血中濃度が比例して上がるわけではありません。
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腸管での吸収率の調整
腸管でのコレステロール吸収率も食事量に応じて変化します。多く摂取した場合の吸収率は低下し、少ない場合は上昇する方向に調整されます。この二重の調整機能によって、食事性コレステロールが血中コレステロールを直接決めるという単純な関係は成立しません。

個人差(ハイパーレスポンダー)について

大多数の人(「ノーマルレスポンダー」)は上記のフィードバック機能が適切に働き、食事性コレステロールが血中コレステロールに与える影響は小さいとされています。一方、一部の人(「ハイパーレスポンダー」)は食事性コレステロールに対してより大きな血中コレステロール上昇反応を示します。家族性高コレステロール血症の方・コレステロール値がすでに高い方は、食事性コレステロールの影響を受けやすい場合があります。このような方は主治医との相談が重要です。

03 REAL LDL CAUSES悪玉コレステロール(LDL)を上げる本当の原因

飽和脂肪酸が主な要因である理由

現在の栄養科学において、LDLコレステロールを上昇させる食事要因として最も根拠が強いのは飽和脂肪酸の過剰摂取です。飽和脂肪酸は肝臓のLDL受容体の発現を低下させ、LDLが血中から回収されにくくなることで血中LDL濃度が上昇します。飽和脂肪酸の主な供給源は、バター・生クリーム・赤身肉の脂肪・ラード・ヤシ油・コプラ油などです。卵の脂質組成は飽和脂肪酸(約1.5g/個)と不飽和脂肪酸(約4g/個)のバランスが比較的良く、飽和脂肪酸の多い食品と比べると影響が小さいとされています。

卵と一緒に食べるものが問題になるケース

LDLに影響しやすい組み合わせ
バター・ベーコン・チーズとの組み合わせ
スクランブルエッグをバターで炒め、ベーコン・チーズを加える——このような「卵+高飽和脂肪酸食品」の組み合わせは、卵そのものよりも一緒に摂る飽和脂肪酸の影響が大きくなります。「卵で問題が出た」と思われるケースの多くは組み合わせの問題です。
バランスの良い組み合わせ
野菜・オリーブオイル・魚との組み合わせ
卵を野菜炒め(オリーブオイル使用)・和食の副菜・サラダのトッピングとして使う場合、飽和脂肪酸の追加が少なく栄養バランスも整いやすいです。卵の「食べ方」と「何と一緒に食べるか」が重要です。
中性脂肪と食事・生活習慣の科学的アプローチ

04 RESEARCH卵の摂取量に関する主な研究知見

卵2個程度の摂取とLDLの関係

Carter et al.(2025)は南オーストラリア大学のランダム化クロスオーバー試験において、飽和脂肪酸を多く含む食品を卵に置き換えた食事パターンでは、LDLコレステロールに有意な悪影響が生じなかったことを示しています(PMID:40339906)。これは「卵を食べること自体」よりも「何と一緒に食べるか・何の代わりに食べるか」が重要であることを示唆しています。

🔬 Qin et al.(China Kadoorie Biobank, 2018)より

北京大学・オックスフォード大学ほか。中国の50万人以上の成人コホートを約9年追跡した大規模研究。毎日1個程度の卵を摂取するグループが、卵をほとんど食べないグループより心血管疾患リスクおよび脳卒中(特に出血性脳卒中)リスクが低かったことが確認された。ただし研究者は因果関係には慎重であり、全体的な食事パターンとの関係が重要と指摘している。PMID:29785957

注意が必要な人

Zhong et al.(2019)のJAMA掲載研究では、食事性コレステロール全体と心血管疾患リスクの関連が示されており(PMID:30874756)、研究間で結果が完全に一致しているわけではありません。特に家族性高コレステロール血症・心血管疾患の既往・2型糖尿病・慢性腎臓病のある方は、食事性コレステロールの影響を受けやすい可能性があるため、主治医との相談が重要です。

05 NUTRITION卵に含まれる栄養素と健康上の意義

タンパク質・ビタミン・ミネラルのバランス

卵1個(約50g)は約6〜7gの良質なタンパク質を含み、アミノ酸スコア(タンパク質の質の指標)が100と非常に高い食品です。また脂溶性ビタミン(A・D・E・K)・ビタミンB群(B2・B12・葉酸)・ミネラル(鉄・亜鉛・セレン)がバランスよく含まれており、食品全体としての栄養密度が高い食材です。

💪
完全タンパク質
アミノ酸スコア100。必須アミノ酸を全て含む
🧠
コリン
神経伝達・肝機能・胎児の脳発達に重要
👁️
ルテイン・ゼアキサンチン
黄斑変性症リスク低減に関与するカロテノイド
☀️
ビタミンD
食品から摂れる数少ないビタミンD供給源
🩸
ビタミンB12
神経機能・赤血球形成・DNA合成に必要
🔩
セレン・亜鉛
抗酸化酵素・免疫機能・タンパク質代謝に関与

コリン・ルテイン・ゼアキサンチンの役割

卵黄に豊富なコリンは、細胞膜の構成成分・神経伝達物質(アセチルコリン)の前駆体・肝機能の維持に関わります。多くの人がコリンを食事から十分に摂れていないとされており、卵は特に貴重なコリン供給源です。またルテインとゼアキサンチンは加齢性黄斑変性症のリスク低減と関連するカロテノイドで、これらも主に卵黄に含まれています。卵白のみにした場合、これらの有用な栄養素を失うことになります。

タンパク質の効率的な組み合わせ方

06 HOW TO EAT卵の食べ方と組み合わせの考え方

飽和脂肪酸を増やさない調理法の選び方

🥗
ゆで卵・温泉卵・ポーチドエッグ
脂質を追加せず調理できるため最も飽和脂肪酸が少ない方法。タンパク質の消化吸収も高い状態を維持できます。
🍳
炒り卵・目玉焼き(オリーブオイル使用)
バターの代わりにオリーブオイル(小さじ1程度)を使うことで飽和脂肪酸の追加を抑えられます。
🚫
避けた方がよい組み合わせ
バター大量使用のスクランブルエッグ・チーズ入りオムレツ・ベーコンエッグなどは卵よりも一緒に使う食材の飽和脂肪酸量が多くなりがちです。

組み合わせると栄養バランスが整う食材

卵は野菜・全粒穀物・豆類・魚と組み合わせることで、タンパク質・食物繊維・ビタミン・ミネラルのバランスが整いやすくなります。例えば「ゆで卵+サラダ+玄米ご飯」「温泉卵乗せ豆腐と野菜」「ポーチドエッグ+全粒粉トースト+葉野菜」などは、卵の栄養価を活かしつつ食事全体のバランスを高める組み合わせです。

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よくある質問

健康な人が1日2個食べても問題ありませんか?
Carter et al.(2025)のランダム化クロスオーバー試験では、飽和脂肪酸の多い食品を卵に置き換えた場合、LDLコレステロールに有意な変化が生じなかったことが報告されています。健康な成人が1日2個程度の卵を摂取することは、現在の科学的根拠上、多くの方にとって許容範囲と考えられています。ただし家族性高コレステロール血症・既往症のある方は主治医に相談してください。
コレステロール値が高めと言われています。卵は控えるべきですか?
コレステロール値が高めと指摘されている場合は、まずLDLを上げる主な要因である飽和脂肪酸(バター・赤身肉の脂肪・乳製品の脂肪)の摂取量を見直すことが優先されます。すでに高脂血症・心臓病・家族性高コレステロール血症の診断を受けている方は必ず主治医に相談してください。
卵白だけにした方がコレステロール的に良いですか?
卵黄にはコレステロールが含まれていますが、同時にビタミンD・ビタミンB12・コリン・ルテイン・ゼアキサンチンなど重要な栄養素も多く含まれています。食事性コレステロールへの影響が小さいことを考えると、健康な方が卵白のみにする必要性は高くないと考えられています。
卵の食べすぎで心臓病リスクは上がりますか?
Qin et al.(2018)の中国コホート研究では1日1個程度の摂取と心血管疾患リスク低下の関連が報告された一方、Zhong et al.(2019)では食事性コレステロール全体が心血管疾患リスクと関連するという結果も報告されており、研究間で結果が一致していない部分もあります。卵の過剰摂取(1日3個以上の継続)については食事全体のバランスとの関係を考えることが重要です。

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まとめ

「卵はコレステロールが危険」という通説は科学的根拠が乏しく、食事コレステロールと血中コレステロールの関係・LDLを上げる本当の要因を正しく理解することが重要です。

  • 「卵はコレステロールが危険」という通説はウサギを使った100年前の動物実験に起源を持ち、人間への直接適用は科学的に否定されている
  • 厚生労働省は2015年版以降の食事摂取基準でコレステロールの摂取上限を撤廃している
  • 血中コレステロールの70〜80%は食事からではなく肝臓が合成しており、フィードバック調整機能がある
  • LDLコレステロールを上げる主な食事要因は飽和脂肪酸の過剰摂取であり、卵そのものではない
  • Carter et al.(2025):飽和脂肪酸食品を卵に置き換えた場合LDLに有意な悪影響なし
  • Qin et al.(2018):中国50万人コホートで1日1個程度の卵と心血管疾患リスク低下の関連
  • Zhong et al.(2019):食事性コレステロール全体と心血管疾患リスクの関連も報告されており研究間で結果は一致していない
  • 家族性高コレステロール血症・心血管疾患既往のある方は主治医に相談が必要
  • 卵はコリン・ルテイン・ビタミンD・完全タンパク質など栄養密度が高い食材である

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参考文献・科学的根拠

  1. 1Carter S, Hill AM, Yandell C, Wood L, Buckley JD, et al. “Impact of dietary cholesterol from eggs and saturated fat on LDL cholesterol levels: a randomized cross-over study.” Am J Clin Nutr. 2025 Jul;122(1):83-91. doi:10.1016/j.ajcnut.2025.03.022. Epub 2025 Apr 4. 南オーストラリア大学(オーストラリア)。ランダム化クロスオーバー試験。飽和脂肪酸を多く含む食品を卵に置き換えた食事パターンにおけるLDLコレステロールへの影響を評価。卵への置き換えがLDLに有意な悪影響を与えなかったことを確認。卵2個程度の摂取とLDLコレステロールの関係の根拠として参照。 PMID:40339906
  2. 2Zhong VW, Van Horn L, Cornelis MC, Wilkins JT, Ning H, Carnethon MR, et al. “Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality.” JAMA. 2019 Mar 19;321(11):1081-1095. doi:10.1001/jama.2019.1572. ノースウェスタン大学(米国)ほか。米国の成人29,615名(6コホート統合解析)を17.5年追跡。食事性コレステロールの摂取量が心血管疾患リスクおよび全死因死亡リスクと用量反応的に関連することを確認。研究間での結果の多様性と注意が必要な背景の根拠として参照。 PMID:30874756
  3. 3Qin C, Lv J, Guo Y, Bian Z, Si J, Yang L, et al.; China Kadoorie Biobank Collaborative Group. “Associations of egg consumption with cardiovascular disease in a cohort study of 0.5 million Chinese adults.” Heart. 2018 Nov;104(21):1756-1763. doi:10.1136/heartjnl-2017-312651. Epub 2018 May 21. 北京大学・オックスフォード大学ほか(China Kadoorie Biobank)。中国の50万人以上の成人コホート(CKB)で約9年追跡。毎日1個程度の卵を摂取するグループで心血管疾患リスク・出血性脳卒中リスクが低かったことを確認。大規模コホートによる卵摂取と心血管疾患の関連の根拠として参照。 PMID:29785957
  4. 4厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」. 2020年策定. コレステロールについて「目標量は設定しない(科学的根拠が十分でない)」とし、2015年版以降のコレステロール摂取上限撤廃の方針を維持。食事性コレステロールの摂取上限撤廃の公的根拠として参照。 厚生労働省 公式ページ