RPEとRIRは何が違うのか

同じことを裏返しで表しています。RIRは「あと何回挙げられるか」という残り回数、RPEはその残り回数を10から引いた数字です。あと2回ならRIR2=RPE8。数える対象が違うだけで、指しているものは同じです。筋トレで先に決めるならRIRのほうが直感的で、記録して比べるならRPEのほうが扱いやすい、という使い分けになります。

01 BASICRPE(主観的運動強度)とは

RPEはRating of Perceived Exertionの略で、日本語では「主観的運動強度」または「自覚的運動強度」と呼ばれます。どちらも同じ指標です。

1960年代にスウェーデンの生理学者ボルグが開発したスケールです。6〜20という中途半端に見える範囲には理由があって、目盛りを10倍すると心拍数(60〜200拍/分)におおよそ対応するよう設計されました(Borg, Med Sci Sports Exerc, 1982)。

ただしボルグ自身が、この対応を文字どおりに受け取らないよう注意を促しています。同じ心拍数でも、それが本人にとってどれくらいの負担なのかは、年齢・種目・環境・そのときの緊張度によって変わるからです。とくに加齢とともに最大心拍数は下がっていくため、40代・50代・60代の方が「RPE13だから心拍130のはず」と考えるのは正しくありません。数字の対応ではなく、自分の感覚そのものを目盛りにする——それがこのスケールの本来の使い方です。

「感覚で決めるのだから不正確では?」という疑問に対しては、経験を積んだトレーニーでは実際の心拍数や最大挙上重量との相関が研究で確認されています。Zourdos et al.(J Strength Cond Res, 2016)は、経験者のRPE評価がバーベル速度と強い逆相関(r=−0.88)を示すことを報告しました。

この研究で見落とせないのは、対象が経験者だけではなかったことです。29名のうち、トレーニング歴5.2年の経験者が15名、0.4年の初心者が14名。逆相関は初心者でも認められましたが、係数は−0.77と経験者の−0.88より弱いものでした。さらに1RMに挑戦する場面では、経験者のほうが遅い挙上速度でより高いRPEをつけていました(p=0.023)。

RPEは、使えば使うほど当たるようになる指標です。始めた初日から正確に判定できるわけではありません。最初の数週間は「たぶんRPE8くらい」で構いません。記録を続けるうちに、感覚と実際の残り回数のズレが縮まっていきます。

02 SCALERPEスケール早見表

RPE 体の感覚 会話 RIR換算 場面例
5 軽い。いくらでも続けられる 楽に話せる 6回以上 ウォームアップ・アクティブリカバリー
6 やや軽い。少し筋肉を使っている感覚 楽に話せる 4〜5回 ウォームアップの最終セット
7 きつくなってきた。集中が必要 話せるが短い文で 3〜4回 メインセットの導入・持久力トレーニング
8 かなりきつい。あと2〜3回できそう 短い言葉のみ 2〜3回 筋肥大のメインセット(最頻出帯域)
9 非常にきつい。あと1回がギリギリ ほぼ無理 1回 高強度セット・筋力テスト直前
10 限界。これ以上1回も挙げられない 不可能 0回 オールアウト(限界まで挙上できない状態)

6〜20と0〜10、どちらのスケールを使うのか

RPEには2種類のスケールがあり、場面によって使い分けられています。

ボルグの6〜20スケールは、主に有酸素運動で使われます。米国スポーツ医学会(ACSM)の運動処方ガイドラインは、中強度をRPE12〜13、高強度をRPE14〜17と定めています(Garber et al., Med Sci Sports Exerc, 2011)。ウォーキングやバイクの強度を決めるときはこちらです。

一方、同じガイドラインは筋力トレーニングの強度を1RMの何%かで定義していて、RPEを使っていません。筋トレでRPEが広く使われるようになったのは、残り回数(RIR)を基準にした0〜10スケールが提案されてからです。この記事の早見表が0〜10なのはそのためで、有酸素の12〜13とは別物として扱ってください。

つまり、有酸素なら6〜20、筋トレなら0〜10。混ざると数字の意味が変わってしまいます。

ボルグスケール(6〜20)について

元のボルグスケールは6〜20の15段階です。6始まりの理由は安静時心拍数60bpmの1/10が由来。筋トレでは上記の簡易版(1〜10または5〜10)が実用的です。有酸素運動の強度管理には原版の6〜20スケールも使われます。

有酸素運動で痩せない5つの理由——RPEを有酸素運動に活用する方法

自宅でRPEを使うなら

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早見表のRPE7とRPE8を見分ける話の直後ですが、その差は重量にすると2〜5kgです。固定式のダンベルを何本も買い足すより、ダイヤルで刻める可変式のほうがRPEでの微調整に向いています。
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03 RIRRIRとの違いと使い分け

RPEとRIRは混用されやすいですが、計測軸が根本的に異なります。RPEは「今のきつさ全体」を評価するのに対し、RIR(Repetitions In Reserve)は「あと何回できるか」という残レップ数で評価します。

どちらを使えばいいか?
初心者→RIR:「あと3回できそう」と直感的に判断しやすく導入しやすい。
経験者→RPE:疲労感全体・フォームの安定感・呼吸の乱れなどを総合的に評価でき、細かい強度管理に向く。
最も実用的→両方併記:「RPE8・RIR2」のようにセットで記録する。
ダンベルとケーブルの強度比較——器具別のRPE活用

04 USE実際のトレーニングでの使い方

スクワット3セット目でRPE8(RIR2)と感じた場合

「あと2回はいけるがフォームが崩れ始めている」状態です。次セットでは重量を2.5〜5kg下げるか、レップ数を1〜2回減らしてRPE8を維持する判断をします。RPE9以上になったら「今日はここまで」——この判断が怪我を防ぎます。

記録の仕方——シンプルな日誌フォーマット

記録例:
スクワット 60kg × 8回 RPE8
スクワット 57.5kg × 8回 RPE8
スクワット 55kg × 9回 RPE8

同じRPEで重量が増えていれば成長の証。セット終了後30秒以内にその場で記録してください。
筋トレの頻度と強度の考え方——RPEを頻度設計に活かす
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05 GOAL目的別のRPE設定ガイド

目的 推奨RPE帯 理由 セット・レップ目安
筋肥大 7〜9 高い機械的張力を維持しながら複数セットこなせる範囲 3〜4セット × 6〜12回
減量 6〜8 代謝ストレスをかけつつ過度な疲労を避ける 3〜5セット × 10〜15回
持久力向上 5〜7 長時間維持できる強度で心肺系に継続的な刺激 3〜5セット × 15〜20回

筋肥大を狙う場合、毎セットRPE10で潰れるまでやる必要はありません。RPE8を複数セット維持する方が総刺激量が高く、フォームも安定し、翌日以降の回復も早くなります。

ピリオダイゼーションと強度管理——周期化にRPEを組み込む方法 スピンバイクHIITでのRPE活用——高強度区間の管理

06 AGE30〜60代がRPEを活用するメリット

30〜60代は疲労回復が遅く、体調変動が若年者より大きく、関節への配慮が必要な年代です。固定重量・固定レップ数での管理よりも「その日の体調に合わせた強度調整」が合理的であり、RPEはそのための最適なツールです。

1RMテスト(最大挙上重量の測定)は関節負担が高く、膝や腰に問題を抱える年代には向かない場面があります。心拍計は装着の手間があります。RPEなら道具不要で、今日の体調に正直に強度を調整できます。「今日はいつもより体が重い」と感じたときに正直にRPEを下げる判断ができることが、長期的な継続と怪我予防につながります。

40〜60代のトレーニング再開ガイド——RPEを使った段階的な強度設計 THE FITNESSに通っている方の声——30〜60代の実際の変化

07 TUNERPEの精度を上げるステップ

1
最初の2〜3ヶ月は心拍計や1RMの軽い確認と並行する
客観的な数値と主観的な感覚を照合することで、自分の「RPE8」がどのくらいの強度なのかキャリブレーションできます。
2
セット終了後30秒以内にその場で評価する
インターバルを挟むと記憶がズレます。セットを終えた直後、呼吸が荒い状態で「今のきつさは何だったか」を即座に記録してください。
3
同じ種目・同じフォームで毎回記録して比較する
種目が変わるとRPEの基準も変わります。スクワットのRPE8とベンチプレスのRPE8は体の使い方が違うため、種目ごとに蓄積データで精度を上げます。
パーソナルトレーニングと自主トレの違い——RPE精度を高める環境

感覚と数字を突き合わせる

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RPEの精度は、客観的な数字と照らし合わせるほど上がります。セット後の心拍数やインターバルの回復具合を記録しておくと、自分の「きつい」がどのあたりに当たるのかが見えてきます。
デメリット:光学式心拍計(手首型)は激しい動作時や皮膚の色素量によって誤差が生じる場合があります。

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08 FIXよくある間違いと修正方法

❌
毎セットRPE10で追い込む
疲労蓄積で後半セットの品質が低下し、総刺激量がむしろ下がります。筋肥大目的ならRPE7〜9の範囲で複数セットを維持する方が効果的です。
❌
「疲労」と「きつさ」を混同する
トレーニング後半は蓄積疲労でRPEが高く見えやすく、前半と同じ基準で評価できません。セットごとに「このセット単体のきつさ」を評価する意識が重要です。
❌
インターバル後に遡って評価する
記憶バイアスで正確性が落ちます。セット直後——バーベルを置いた瞬間に記録してください。
❌
RPE固定で毎回同じ重量に留まる
RPEはツールであって目標ではありません。同じRPE8で重量が増えていればそれが成長の証です。定期的に重量を上げる挑戦を忘れないでください。
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よくある質問

RPEと自覚的運動強度は同じものですか?
はい、同じ指標です。RPE(Rating of Perceived Exertion)は英語表記で、日本語では「主観的運動強度」または「自覚的運動強度」と呼ばれます。いずれも運動中に感じるきつさを数値化する方法を指します。
RPE8とはどのくらいきつい状態ですか?
RPE8は「あと2〜3回できそうだが、かなりきつい」状態です。RIRに換算するとRIR2〜3。筋肥大トレーニングで最も多用される強度帯で、フォームを維持しながら十分な機械的張力を与えられます。
RIRとRPEはどちらを使えばいいですか?
初心者はRIRが直感的でおすすめです。経験者はRPEが疲労感全体を総合評価できるため細かい管理に向きます。両方を併記(RPE8・RIR2)して記録するのが最も実用的です。
初心者でもRPEは使えますか?
使えます。最初の2〜3ヶ月は精度が低いことを前提に、心拍計や軽い1RM確認と並行して感覚を磨いてください。セット終了直後に評価し、同じ種目で毎回記録すると精度が上がります。
RPEはどうやって記録すればいいですか?
種目名・重量・レップ数・RPE値を並べたシンプルな日誌形式が実用的です。例:スクワット 60kg×8回 RPE8。セット終了後30秒以内に記録してください。

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まとめ

RPEは道具不要で「その日の体調に合わせた強度管理」ができる、30〜60代に特に有効な指標です。

  • RPE=主観的運動強度=自覚的運動強度(同じ指標の異なる呼び方)
  • RPE8(RIR2〜3)が筋肥大トレーニングで最も多用される強度帯
  • RPEは「今のきつさ全体」、RIRは「あと何回できるか」——初心者はRIR、経験者はRPE
  • 筋肥大→RPE7〜9、減量→RPE6〜8、持久力→RPE5〜7が目安
  • セット終了後30秒以内に記録。インターバル後の遡り評価はNG
  • 毎セットRPE10は逆効果——RPE8を複数セット維持する方が総刺激量が高い
  • 同じRPEで重量が増えていれば成長の証

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トレーナー Yukkey プロフィール
18年の指導経験をもつトレーナーの詳細。

参考文献・科学的根拠

  1. 1Borg GA. “Psychophysical bases of perceived exertion.” Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377-81. ウメオ大学(スウェーデン)。RPE(ボルグスケール)の原著論文。主観的運動強度の概念・心理物理学的根拠・カテゴリースケールの開発を報告。RPEの基本概念の根拠として参照。 PMID:7154893
  2. 2Zourdos MC, Klemp A, Dolan C, et al. “Novel resistance training-specific rating of perceived exertion scale measuring repetitions in reserve.” J Strength Cond Res. 2016 Jan;30(1):267-75. フロリダ・アトランティック大学(米国)。29名(経験者15名・初心者14名)を対象に、RIRベースのRPEスケールを検証。RPE評価はバーベル速度と逆相関を示し、係数は経験者r=−0.88、初心者r=−0.77だった。RPE/RIRの信頼性と、経験による精度差の根拠として参照。 PMID:26049792
  3. 3Garber CE, Blissmer B, Deschenes MR, et al. “Quantity and Quality of Exercise for Developing and Maintaining Cardiorespiratory, Musculoskeletal, and Neuromotor Fitness in Apparently Healthy Adults.” Med Sci Sports Exerc. 2011 Jul;43(7):1334-59. ACSMポジションスタンド。有酸素運動の強度をボルグ6〜20スケールで中強度12〜13・高強度14〜17と定義。筋力トレーニングの強度は1RMの割合で定義しており、RPEを用いていない。2つのスケールの使い分けの根拠として参照。 PMID:21694556