QUICK ANSWER
  • 100種類以上:現在確認されているマイオカインの数(Pedersen & Febbraio, 2012)
  • 7種の代表的マイオカイン:IL-6・イリシン・BDNF・IL-15・FGF21・カテプシンB・オステオカルシンが脂肪・脳・骨・免疫・肌に働きかける
  • 週3回から効果が出始める:大筋群を使う筋トレ+中強度有酸素運動の組み合わせが効果的
  • 食事は基盤づくり:タンパク質・オメガ3で分泌の土台となる筋肉量を維持できる
100種類以上
確認されている
マイオカインの数
最大100倍
運動中のIL-6
血中濃度の上昇幅
週3回から
効果を感じ始める
運動頻度の目安

「筋トレは体に良い」という常識の核心にある仕組みがマイオカインです。運動すると筋肉がホルモン工場に変わり、脂肪燃焼・脳・骨・血管・免疫・肌まで全身に働きかけます。この仕組みを知ることで、筋トレへの取り組み方が変わります。

SEC01 WHAT ISマイオカインとは|筋肉が「内分泌器官」として働くメカニズム

🔬 科学的根拠(Pedersen BK & Febbraio MA, 2012)

「筋肉の収縮によって産生・発現・分泌され、自己分泌・傍分泌・内分泌効果を発揮するサイトカインやその他のペプチドはマイオカインと分類すべきである」——デンマーク・コペンハーゲン大学のペダーセン博士らがNat Rev Endocrinol誌(2012)で確立したこの概念は、運動科学のパラダイムを変えました。現在100種類以上のマイオカインが同定されています(PMID:22473333)。

DEFINITION
マイオカインの定義と発見の歴史
マイオカイン(Myokine)は「マイオ(筋肉)」と「カイン(サイトカイン)」の造語です。2000年代以降、筋肉が運動中にIL-6を血中に大量放出することが発見され(運動後に最大100倍に達する)、筋肉が単なる運動器官でなく「内分泌器官」として機能することが明らかになりました。
WHY MOVEMENT MATTERS
なぜ「動かないと出ない」のか
マイオカインの分泌は筋肉の収縮そのものが引き金です。座りっぱなしの状態では分泌されません。逆に言えば、週3回でも筋肉を動かすだけで全身への健康恩恵が生まれます。
MYOKINE vs ADIPOKINE
白色脂肪から出る「アディポカイン」との違い
脂肪組織から分泌されるアディポカイン(レプチン等)は体脂肪量が多いほど炎症促進型が増えますが、マイオカインは運動量に比例して抗炎症型ホルモンが増えるという正反対の特性があります。

SEC02 TYPES主要マイオカイン7種の種類と効果一覧

マイオカイン主な標的器官主な効果分泌を高める運動
IL-6肝臓・脂肪・免疫系エネルギー代謝促進・抗炎症・インスリン感受性改善有酸素・筋トレ全般
イリシン褐色脂肪・骨白色脂肪の褐色化→代謝向上、骨密度維持筋力トレーニング
BDNF脳(海馬)神経細胞の生存・新生促進→記憶・認知機能向上有酸素運動(中強度・長時間)
IL-15脂肪組織・骨脂肪分解促進・筋肉量維持・骨密度維持・肌コラーゲン産生筋力トレーニング
FGF21脂肪・肝臓・膵臓脂肪酸酸化促進・血糖コントロール改善有酸素運動・筋トレ
カテプシンB記憶関連タンパク質(BDNF・IGF1)の産生促進有酸素運動
オステオカルシン骨・筋肉・脳・膵臓骨密度維持・筋力向上・認知機能・血糖調節衝撃負荷のある運動

①IL-6——最初に発見されたマイオカインで、運動中の血中濃度は最大100倍に達します。運動中のIL-6は抗炎症作用を発揮し、脂肪酸の酸化を促進します。

②イリシン——筋力トレーニングで分泌量が増加し、白色脂肪の褐色化を誘導します。イリシンが褐色脂肪細胞を活性化する仕組みの詳細

③BDNF——有酸素運動後に分泌が増加し、海馬の神経細胞の生存・新生を促進します。Erickson et al.(2011)の研究では1年間の有酸素運動で海馬が平均2%増大し記憶力が向上することが確認されています。BDNFが脳に与える効果と筋トレの詳細

SEC03 HEALTH EFFECTSマイオカインがもたらす健康効果6選

1
脂肪燃焼と代謝向上(イリシン・IL-6)
イリシンは白色脂肪の褐色化を誘導し、基礎代謝を高めます。IL-6は運動中に脂肪酸の酸化を直接促進します。
2
認知機能の維持と脳の活性化(BDNF・カテプシンB)
有酸素運動でBDNFが増加し、海馬の神経細胞の新生を促進します(Erickson et al., 2011)。カテプシンBはBDNF・IGF1の産生をさらに後押しします。
3
血管・心臓の健康維持(IL-6・抗炎症作用)
運動中のIL-6は強力な抗炎症作用を発揮し、動脈硬化の原因となる慢性低度炎症を抑制します。
4
骨密度の維持(オステオカルシン・IL-15)
オステオカルシンは骨の代謝を活性化し骨密度を維持します。特に女性は加齢に伴う骨密度低下が大きいため意識したいポイントです。40〜50代女性の12週間ボディメイクプログラム
5
肌のコラーゲン産生(IL-15)
IL-15は皮膚の線維芽細胞に作用してコラーゲン産生を促進します。筋トレが肌にも働きかける根拠のひとつです。
6
免疫機能のサポート(NK細胞の活性化)
定期的な運動はNK細胞(ナチュラルキラー細胞)をはじめとする免疫細胞の働きを整えることが報告されています。過度な運動はかえって免疫機能を一時的に低下させることもあるため、強度と回復のバランスが重要です。筋トレが免疫力を高める科学的メカニズム
【根拠】SEC03で解説した健康効果のうち、骨密度維持(効果④)と肌のコラーゲン産生(効果⑤)は、それぞれオステオカルシン・IL-15というマイオカインが関与しています。これらの働きを土台から支えるには、骨の材料となるビタミンD3・カルシウムと、酸化ストレスから細胞を守るアスタキサンチン(天然カロテノイド系抗酸化物質)の補完が理にかなっています。運動によるマイオカイン分泌と栄養サポートを組み合わせることで、骨・肌への複合的なアプローチが可能になります。
【デメリット】 サプリメントは食品であり、医薬品のような即効性は期待できません。ビタミンDは過剰摂取すると高カルシウム血症のリスクがあるため、用法・用量を守り過剰摂取を避けてください。骨粗鬆症の治療中の方は主治医にご相談ください。
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SEC04 HOW TO INCREASEマイオカインを増やす運動法と食事

重要:週3回の筋トレから始めるだけで効果が期待できます。完璧なプログラムより「続けられる習慣」が最優先です。
💪 筋力トレーニング
大筋群種目でイリシン・IL-15・FGF21を高める
スクワット・デッドリフト・ベンチプレス・懸垂など大筋群種目が、イリシン・IL-15・FGF21の分泌を特に高めます。セット数より「しっかり収縮させること」が重要です。週2〜3回・1回45〜60分が目安です。
🏃 有酸素運動
Zone2でBDNF・IL-6の分泌を引き出す
最大心拍数の60〜75%(Zone2)で20〜40分継続することでBDNF・IL-6の分泌が顕著に増加します。週3〜4回が推奨されます。有酸素運動の脂肪燃焼メカニズム詳細
⚡ HIIT
短時間でIL-6・イリシンを一気に引き出す
30秒全力→90秒休憩×8セットなどの高強度インターバルは、短時間でIL-6・イリシンを引き出します。ただし関節・心臓への負荷が高いため、中高年はまず基礎的な運動に慣れてから導入してください。HIITタバタ式の実践方法

食品からのサポート——分泌の土台となる筋肉を整える

マイオカインの分泌自体は運動による筋収縮が引き金ですが、その材料となる筋肉を維持・強化するには栄養面の土台づくりも欠かせません

🥩 タンパク質
体重×1.6〜2.0g/日を目安に、肉・魚・卵・大豆製品からまんべんなく。運動後30分以内の摂取が筋タンパク質合成を後押しします。
🐟 オメガ3脂肪酸
青魚(サバ・イワシ等)のEPA・DHAは筋肉の炎症コントロールに関与するとされ、運動との相性が良い栄養素です。
☀️ ビタミンD・カルシウム
オステオカルシンによる骨代謝をサポートする基礎栄養素。日光浴や魚介・きのこ類からの摂取を心がけます。
🥛 発酵食品
ヨーグルト・納豆などは腸内環境を整え、間接的に運動パフォーマンスの維持に寄与すると考えられています。
60代のプロテイン・サプリ活用ガイド
【根拠】マイオカイン分泌の材料となる筋肉を維持・合成するには、タンパク質(特に必須アミノ酸のロイシン・バリン・イソロイシン)が運動後30分以内に十分量供給されることが重要です。Westerterp-Plantenga et al.(Br J Nutr, 2012)のレビューでも、高タンパク食(体重×1.6g以上/日)が除脂肪体重の保護と運動後の筋タンパク質合成促進に有効であることが示されています。食事だけでこの量を毎日確保するのが難しい場合、国産の高品質プロテインでの補完は実用的な手段です。
【デメリット】 プロテインシェイクはあくまで食事補助品です。通常の食事からのタンパク質摂取を優先することが基本で、腎機能に不安がある方は過剰摂取に注意し医師にご相談ください。
🥛
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SEC05 BY AGE年代別マイオカイン活用ガイド

30〜40代
筋トレ習慣の確立が将来の認知・骨・代謝の土台をつくる
30代から筋肉量は年1%ずつ減少します。この時期に筋力トレーニング習慣を確立することで、将来の認知機能・骨密度・代謝の土台が作られます。筋トレ(週2〜3回)+有酸素(週2〜3回)の組み合わせが効果的です。
50〜60代
BDNF・オステオカルシン・IL-15を意識した運動が特に重要
50〜60代はBDNF・オステオカルシン・IL-15の分泌を意識した運動が特に重要です。スクワット・ランジ・デッドリフトなど大筋群多関節種目は骨密度とオステオカルシン分泌の両面で有効です。当ジムの指導現場でも、運動経験のない50代以降の会員様が「まずスクワット10回」から始めて数ヶ月で体調の変化を実感されるケースを数多く見てきました。THE FITNESSでは関節に配慮した年代別プログラムを個別設計しています。

SEC06 DAILY HABITS日常生活でマイオカインを増やす習慣

🚶 1日8,000歩ウォーキング
通勤中の一駅歩き・階段利用が積み上がります。ウォーキングの健康効果詳細
⏱ 30分ごとに立ち上がる
座位時間を減らすだけで分泌が促進されます。デスクワーク中はタイマーを活用してください。
🥩 タンパク質を毎食20〜30g
筋肉の材料確保でマイオカイン分泌の基盤を維持します。
😴 7〜8時間の睡眠
深い睡眠中に成長ホルモンが分泌され筋肉が修復されます。筋肉の回復がマイオカイン分泌の基盤になります。

SEC07 IMMUNITYマイオカインと免疫・がん予防に関する研究

⚠️ 研究段階の知見——慎重な理解が必要なトピックです

近年、運動によるマイオカイン分泌と免疫機能の関連について研究が進んでいます。Pedersen et al.(2016)のマウスを用いた実験では、自発的な運動によるIL-6分泌が、がん細胞を排除する免疫細胞であるNK細胞の動員を促し、腫瘍の増殖を抑制したことが報告されています。

ただし、この知見は主に動物実験によるものであり、ヒトにおける予防効果や治療効果が確立されているわけではありません。「運動をすればがんが予防できる」と断定するものではなく、あくまで運動と免疫機能の関係を示す研究のひとつとして捉えていただくことが重要です。気になる症状がある場合は自己判断せず、医療機関にご相談ください。

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よくある質問(FAQ)——マイオカイン Q&A

マイオカインとは何ですか?
マイオカインは、筋肉が収縮するたびに分泌されるホルモン様物質(サイトカイン)の総称です。現在100種類以上が確認されており、脂肪燃焼・認知機能・骨密度・血管・免疫・肌など全身の臓器に働きかけます(Pedersen & Febbraio, 2012)。
マイオカインを増やすにはどうすればいいですか?
筋肉の収縮運動が直接の引き金です。スクワット・デッドリフトなど大筋群を使う筋力トレーニング(週2〜3回)と、最大心拍数60〜75%の有酸素運動(週3〜4回)を組み合わせることが最も効果的です。タンパク質(体重×1.6〜2.0g/日)の摂取も基盤として重要です。
中高年でもマイオカインの効果はありますか?
はい。研究では年齢に関係なく運動によるマイオカイン分泌の効果が確認されています。むしろ50〜60代ではBDNF(認知機能)・オステオカルシン(骨密度)・IL-15(筋肉量維持)が特に重要となるため、意識して継続することの意義が大きくなります。
マイオカインの健康効果にはどんなものがありますか?
主な効果は6つです。①脂肪燃焼と代謝向上(イリシン・IL-6)②認知機能の維持(BDNF・カテプシンB)③血管・心臓の健康維持(IL-6の抗炎症作用)④骨密度の維持(オステオカルシン・IL-15)⑤肌のコラーゲン産生(IL-15)⑥免疫機能のサポート(NK細胞の活性化)。
どのくらいの運動量でマイオカインの効果が出ますか?
週3回の筋トレから効果が期待できます。完璧なプログラムより「続けられる習慣」が最優先です。まずはスクワット10回×3セットを週3回から始め、慣れてきたら有酸素運動を組み合わせていくのが現実的なアプローチです。
筋トレと有酸素運動ではどちらがマイオカインを多く出しますか?
種類によって異なります。イリシン・IL-15・FGF21は筋力トレーニングで特に分泌が増え、BDNF・カテプシンBは有酸素運動でより多く分泌されます。IL-6はどちらでも分泌されます。両方を組み合わせることで異なる種類のマイオカインを網羅的に引き出せます。
マイオカインはサプリメントで補えますか?
マイオカインそのものをサプリメントとして摂取することはできません。分泌のきっかけは筋肉の収縮運動そのものです。ただし、分泌の材料となる筋肉を維持するためのタンパク質やビタミンDなどを補うことは、間接的なサポートとして意味があります。
マイオカインはがん予防に関係しますか?
動物実験では、運動によるIL-6分泌が免疫細胞の働きを高め、腫瘍の増殖を抑制したという報告があります(Pedersen et al., 2016)。ただしヒトでの予防効果が確立されているわけではなく、研究段階の知見です。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
この記事は、筋トレの本場ロサンゼルスで15年の指導経験を持ち、NABBA 2025 GPF優勝・LA Championship 2位・NESTA-PFT/SFT取得のトレーナーが、調布市のパーソナルジムTHE FITNESSで執筆しています。18年の指導現場において、スクワット10回から始めた50代・60代の会員様が数ヶ月で体調の変化を実感されるケースを数多く見てきました。マイオカインの仕組みを知ることで、「なぜ筋トレが全身に効くのか」が腑に落ち、継続につながります。
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ロサンゼルス15年+日本3年・計18年指導経験 ・ NABBA 2025 GPF優勝 ・ LA Championship 2位

まとめ筋トレが全身に働きかける理由

マイオカインとは:筋肉が収縮するたびに分泌される健康ホルモン様物質の総称(Pedersen & Febbraio, 2012)。IL-6・イリシン・BDNFなど100種類以上が確認されており、脂肪燃焼・認知機能・骨密度・血管・肌・免疫まで全身に働きかけます。

まず始めるなら:週3回、スクワット10回×3セットから。慣れてきたら有酸素運動を組み合わせ、食事ではタンパク質と発酵食品を意識的に取り入れると効果を実感しやすくなります。

「今日から動く」ことが一番の近道:年齢を問わず、筋肉を動かすたびに全身への健康指令が送られています。

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参考文献・科学的根拠

  1. 1Pedersen BK, Febbraio MA. “Muscles, exercise and obesity: skeletal muscle as a secretory organ.” Nat Rev Endocrinol. 2012;8(8):457-465. マイオカイン概念の確立根拠。筋肉が内分泌器官として機能し100種類以上のマイオカインを分泌することを示した。本記事の基礎的定義と種類解説の主要文献。 PMID:22473333 →
  2. 2Erickson KI, Voss MW, Prakash RS, et al. “Exercise training increases size of hippocampus and improves memory.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(7):3017-3022. 1年間の有酸素運動で海馬が平均2%増大し記憶力が向上することを確認した。BDNFによる認知機能改善の根拠として参照。 PMID:21282661 →
  3. 3Pedersen BK, Idorn M, Olsen GH, et al. “Voluntary Running Suppresses Tumor Growth through Epinephrine- and IL-6-Dependent NK Cell Mobilization and Redistribution.” Cell Metab. 2016;23(3):554-562. マウスを用いた実験で、自発的な運動によるIL-6分泌がNK細胞を動員し腫瘍増殖を抑制したことを報告した動物実験。ヒトへの直接応用には注意が必要。 PMID:26895752 →