「日本人はどのくらい運動しているのか」を正確な数字で把握しようとしたとき、困るのが「調査によって数値がバラバラ」という問題です。スポーツ庁の調査では52%、厚労省の調査では35%と、同じ「日本人の運動率」を指しながら全く異なる数字が出てきます。この記事では両調査の定義と目的を整理したうえで、確定している最新の一次統計データを一覧化しています。

51.7%
スポーツ実施率(週1日以上)
令和7年度・スポーツ庁
34.6%
運動習慣者割合
令和6年・厚生労働省
14.1pt
「したい」vs「している」
希望と実態の乖離
QUICK ANSWER:
スポーツ庁令和7年度:週1日以上のスポーツ実施率51.7%(男性55.0%・女性48.8%)
厚労省令和6年:「運動習慣者」34.6%・1日の平均歩数7,071歩
政府目標(週1回以上スポーツ実施率70%・2026年)まで▲18.3ptの乖離

SEC01 DEFINITION「スポーツ実施率52%」と「運動習慣者35%」はなぜ違うのか|調査定義の整理

2つの調査の定義比較

調査名主体定義最新値(公表年)
スポーツの実施状況等に関する世論調査スポーツ庁週1日以上・運動またはスポーツを実施51.7%(令和8年3月公表)
国民健康・栄養調査(生活習慣調査)厚生労働省週2回以上・30分以上・1年以上継続34.6%(令和7年5月公表)

スポーツ庁調査は「週に1日でも何らかの運動・スポーツをしたか」を問うものです。一方、厚生労働省の「運動習慣者」はより厳格で、週2回以上・1回30分以上・1年以上継続という3条件をすべて満たす必要があります。どちらも公的一次統計として信頼性は高く、目的に応じて使い分けることが重要です。

調査方法の概要

調査対象方式規模
スポーツ庁世論調査20歳以上インターネット調査有効回収数 約4万件規模
国民健康・栄養調査無作為抽出した世帯訪問調査身体計測・血液検査・食事・生活習慣の総合調査

SEC02 SPORTS PARTICIPATION TRENDSスポーツ実施率の年次推移(令和4〜7年度)|スポーツ庁確定値

出典:スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」各年度確定値

スポーツ実施率(週1日以上)年次推移

年度全体男性女性男女差
令和4年度(2022)52.3%55.2%49.5%5.7pt
令和5年度(2023)52.0%54.7%49.4%5.3pt
令和6年度(2024)52.5%55.6%49.6%6.0pt
令和7年度(2025)51.7%55.0%48.8%6.2pt(過去最大)
※令和8年3月11日公表の確定値。調査対象は20歳以上。
男女差が過去最大・目標70%まで▲18.3pt:令和4年度から横ばいが続いており、第3期スポーツ基本計画(令和4〜8年度)が掲げる「成人の週1回以上スポーツ実施率70%」の目標達成は極めて困難な状況です。令和5年度には5.3ptまで縮小していた男女差が、令和7年度には6.2ptと再拡大し調査開始以来の過去最大を記録しました。

SEC03 EXERCISE HABITS & STEPS運動習慣者割合と歩数の実態(厚労省令和6年確定値)

出典:厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」第3部生活習慣調査の結果(令和7年5月公表)

運動習慣者割合(週2回・30分以上・1年継続)

全体
34.6%
年齢調整値:31.3%
男性
38.5%
女性
31.5%

1日の平均歩数

区分平均歩数年齢調整値目標との差
全体7,071歩7,231歩20〜64歳目標8,000歩に対し▲約1,000歩
男性7,763歩
女性6,495歩目標に対し▲約1,500歩
健康日本21(第三次)の目標:20〜64歳で8,000歩、65歳以上で6,000歩。

厚労省調査によると、男女ともに30〜40代で運動習慣者割合が最も低くなっています。50代以降は割合が上昇に転じる傾向があり、退職や子育て一段落が運動再開のきっかけになっていることが示唆されています。

指導現場から:調布のジムで指導する30〜50代のクライアントも、「以前は運動していたが、仕事・育児が忙しくなってやめてしまった」という方が大多数を占めます。数値はその実感と完全に一致しています。
メタボリックシンドロームとトレーニングの関係

SEC04 AGE & GENDER DATA年代別・性別の詳細データ|20〜50代「子育て・働き盛り世代」の実態

実施時間の性年代別格差(令和7年度・中央値)

区分週あたり実施時間(中央値)特記
全体69.0分
男性90.0分
女性59.8分男性の約67%
20〜50代女性30〜40分程度男性の約半分。厚労省「運動習慣者」基準にほとんど届かないレベル

令和6年度・希望と実態の乖離(性年代別・大きい順)

順位性年代乖離幅背景
1位40代女性19.9pt育児・仕事・家事のトリプルワーク最重複期
2位30代女性18.6pt育児ピーク・キャリア構築期の時間的制約
3位20代女性17.6pt就職・ライフスタイル変化期
出典:令和6年度大阪府資料記載の年代別乖離データをもとに整理。スポーツ庁令和6年度調査(令和7年3月公表)ベース。
「運動したい・した方がいいとわかっている」にもかかわらず実際には動けていない格差が最も大きいのが30〜40代女性です。育児・仕事・家事のトリプルワークが最も重なる時期であり、「時間がない」という構造的な阻害要因が数字に直接反映されています。
30代男性の理想体型と筋肉量の目安 忙しい40代のためのトレーニングシステム

SEC05 SPORTS TYPE DATA種目別実施率|ウォーキング・筋トレ・ヨガの実態

令和5年度スポーツ庁調査・種目別実施率(上位・複数回答)

順位種目特徴
1位ウォーキング・散歩全年代で最も広く実施されている種目
2位体操(ラジオ体操等)シニア層に特に多い
3位筋力トレーニング30〜50代男性での伸びが顕著
4位水泳・水中運動中高年女性での継続率が高い
5位ヨガ・ピラティス30〜40代女性で増加傾向
実施率の具体的な数値は各年度の集計表PDF(mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00013.htm)に掲載。

筋力トレーニングは近年30〜50代の男女に広く普及しています。ただし「週に何回・何分・どの強度で行うか」によって効果は大きく異なります。週1回・20分の軽い筋トレと、週2〜3回・45〜60分の高強度トレーニングでは、筋肉量増加・代謝改善の効果に顕著な差があることが研究で示されています(Schoenfeld et al., 2017)。

指導現場から:調布のジムでも「週1回から始めて、3ヶ月で週2〜3回に増やす」という段階的な設計を推奨しており、継続率を高めるうえで最初のハードルを下げることが重要だと実感しています。
骨密度を高める筋トレの方法と科学的根拠

SEC06 BARRIERS TO EXERCISE「運動したいけどできない」14.1ptの乖離|阻害要因の分析

令和6年度スポーツ庁調査では、週1日以上スポーツを「したい」と答えた人が66.6%いる一方、実際に「している」人は52.5%にとどまり、14.1ptの乖離があります。

運動しない主な理由(スポーツ庁調査・複数回答)

理由特に多い層・背景
時間がない30〜50代に多い。仕事・育児・家事など多忙による時間不足
面倒・億劫運動を始めること自体への心理的ハードル
体力・健康状態への不安「今の自分の体では無理かも」という自己効力感の低下
きっかけがない一緒に運動する仲間・環境・情報がない
経済的理由ジム代・用具代などの費用負担
令和5年度調査では、「運動に関心がない・したくない」という無関心層が17.6%存在することも確認されています。
職場の支援がある場合は実施率が約17〜18pt高い:勤務先で運動・スポーツを活用した取り組みがなされている場合の週1日以上スポーツ実施率は70.1%に達していました(令和6年度調査)。取り組みがない場合との差は約17〜18ptと大きく、職場による健康経営の効果が明確に数字に表れています
仕事のストレスと体重増加の関係 初心者向け6週間トレーニングプログラム

SEC07 REGIONAL DATA都道府県別・東京都・三多摩地域の実態

都道府県別スポーツ実施率の格差

スポーツ庁令和6年度調査では、都道府県別のスポーツ実施率データも公開されています(Tableau形式)。一般に実施率が高い地域と低い地域で10〜15pt程度の格差が見られます。実施率に影響する要因として、スポーツ施設へのアクセス・地域のスポーツ推進体制・年齢構成・就業率・産業構造などが挙げられています。

東京都・三多摩地域の特性

特性内容
時間的制約30〜40代の就業者割合が高く、時間的制約から実施率が低めになりやすい
施設密度フィットネス施設・スポーツ施設の密度は全国トップ水準
構造的乖離「施設はあるが時間がない」という構造的乖離が大きい
三多摩の特徴緑地・公園が多くアウトドア運動環境に恵まれているが、専門的な指導を受けられる施設の数は23区内より少ない傾向

調布市は三多摩地域の中でもスポーツインフラが充実しており、多摩川沿いのランニングコース、公共体育館・プール、民間フィットネス施設が一定数揃っています。一方で、個別の指導が受けられるパーソナルジムはまだ少なく、本格的なトレーニング指導を求める場合は選択肢が限られています。

SEC08 POLICY GAP TABLE政策目標と現状の乖離テーブル|健康日本21・スポーツ基本計画

出典:スポーツ庁「第3期スポーツ基本計画」(令和4年3月閣議決定)・厚生労働省「健康日本21(第三次)」(令和5年5月告示)より作成

スポーツ・健康系政策目標と現状の比較(2025年時点)

政策指標目標値現状値乖離目標年度
第3期スポーツ基本計画成人の週1回以上スポーツ実施率70%51.7%(R7)▲18.3pt令和8年度
第3期スポーツ基本計画運動習慣者割合(参考値)40%34.6%(R6)▲5.4pt
健康日本21(第三次)運動習慣者割合(最終目標)65%34.6%(R6)▲30.4pt令和14年度
健康日本21(第三次)1日の歩数(20〜64歳)8,000歩約7,000歩台(R6)▲約1,000歩令和14年度
令和8年度目標(残り1年)での70%達成は困難:令和4年度から横ばいが続いており、これは「政策の失敗」というより、フルタイム就労・育児・介護の増加、デジタル化による座位時間の増加など、現代の生活環境そのものが身体活動量を減らす方向に動いているという構造的問題を反映しています。健康日本21(第三次)が掲げる2032年の目標(65%)は現状34.6%から約2倍近い水準であり、達成には制度・環境・個人の行動変容すべてが連動して変化する必要があります。
メタボリックシンドロームの統計データ

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SEC09 PRACTICAL GUIDE運動習慣のない30〜50代が今日からできること|現場から見た処方

継続しやすい運動習慣の設計原則

研究では、運動習慣の形成において「自己効力感(自分にもできる)」と「環境設定(すぐ始められる状態)」が最も重要な要素であることが示されています(Bandura, 1997;厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」)。

ステップ内容ポイント
STEP 1週1回・10分から始める最初から週3回・45分を目標にすると継続率が下がります。「できた」という成功体験を積み上げることが習慣化の起点
STEP 2日常の中に組み込む通勤での1駅分徒歩・昼休みの10分ウォーキング・入浴前のストレッチなど、既存のルーティンに運動を組み込む「テンプテーション・バンドリング」
STEP 3目的を明確にする「健康のため」という漠然とした動機は継続につながりにくい。「3ヶ月で体重を3kg減らす」「スーツが似合う体をキープする」など、具体的なビジョンを持つ
指導現場から:調布のジムでは30〜60代のクライアントに対してこの段階的な設計を個別に組み立てています。一人ひとりの生活リズム・体力レベル・目標が異なるため、データが示す「平均的な傾向」をベースに、個人に合わせた調整が重要です。

よくある質問

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スポーツ庁の調査と厚労省の調査、どちらを参考にすればよいですか?
目的によって使い分けることをおすすめします。日本人がどれだけスポーツに参加しているかという社会的傾向を見るならスポーツ庁調査、健康上のリスクを下げるために十分な運動習慣があるかという判断には厚労省の「運動習慣者」定義が適しています。健康改善を目的とするならば、週2回・30分以上・1年継続という厚労省基準を一つの目安にすることが現実的です。
男女差が過去最大になった理由は何ですか?
明確な単一の原因は特定されていませんが、女性の就業率上昇に伴う時間的制約の増加、育児・家事の負担が依然として女性に偏っていること、スポーツ文化が男性向けに設計されている側面などが複合的に影響していると考えられています。スポーツ庁は女性向けの運動促進施策を強化する方向で検討しており、今後の調査でこの差が縮小するかどうかが注目されます。
40代で運動習慣をつけることは遅くないですか?
遅くありません。厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、40〜60代からの運動開始でも筋力・心肺機能・骨密度の維持・向上効果があることが示されています。また、この年代での運動習慣化は、加齢に伴う筋肉量の低下(サルコペニア)・メタボリックシンドロームの予防に特に効果的です。「遅すぎる」ことはなく、今日から始めることが最善です。
週1回のジム通いでは運動習慣者にカウントされないのですか?
厚労省の「運動習慣者」定義(週2回以上・30分以上・1年継続)には該当しませんが、週1回でも継続すること自体に健康上の意義があります。WHO身体活動ガイドライン(2020)では「まったく動かないより少しでも動く方がよい」というアプローチが推奨されており、週1回でも開始することに価値があります。まずは週1回から始め、体力・時間に余裕が出てきたら週2回に増やすのが現実的なステップです。
歩数目標8,000歩は必ず守る必要がありますか?
目標値は一つの指標であり、絶対的な基準ではありません。厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、現在の歩数から「少し増やす」ことが重要であると強調されています。現在5,000歩の人が6,000〜7,000歩に増やすことも有意義な改善です。1日8,000歩にこだわるより、毎日の歩数を把握して少しずつ増やすという姿勢が大切です。
データが頻繁に更新されますが、どこで最新情報を確認できますか?
スポーツ庁の調査は毎年3月頃に公表されます(mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1402342.htm)。厚労省の国民健康・栄養調査は調査年の翌々年度に公表されるため、タイムラグが生じます。両省庁の公式サイトを定期的に確認することを推奨します。
この記事は、筋トレの本場ロサンゼルスで15年の指導経験を持ち、NABBA 2025 GPF優勝・LA Championship 2位・NESTA-PFT/SFT取得のトレーナーが、調布市のパーソナルジムTHE FITNESSで執筆しています。

SEC10 まとめまとめ:数字が示す「運動できない日本」から「自分の一歩」へ

  • スポーツ庁令和7年度:週1日以上のスポーツ実施率51.7%と横ばい。男女差6.2ptと過去最大。政府目標70%(令和8年度)まで▲18.3ptの大きな乖離があります
  • 厚労省令和6年:「運動習慣者」は34.6%、1日の歩数平均は7,071歩で、いずれも政策目標に届いていません。健康日本21(第三次)の最終目標65%(2032年)は現状の約2倍近い水準
  • 「できない構造」の中でも変えられること:週1回・10分から始める小さな一歩、日常動作に組み込む工夫、職場での運動支援制度の活用(実施率約17〜18pt向上)、専門のトレーナーへの相談
  • 30〜40代女性の乖離が最大(40代:19.9pt):この格差は意志の問題ではなく、育児・仕事・家事のトリプルワークという構造的問題が数字に直接反映されています
ウォーキングと健康効果の科学的根拠 調布のパーソナルジムTHE FITNESSの口コミ・体験談

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参考文献・一次データ出典

  1. 1スポーツ庁「令和7年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和8年3月11日公表) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00234.html
  2. 2スポーツ庁「令和6年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和7年3月11日公表) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00202.html
  3. 3スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」年次一覧 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1402342.htm
  4. 4スポーツ庁「令和6年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」集計表・ローデータ https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00013.htm
  5. 5厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」(令和7年5月公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r6-houkoku_00001.html
  6. 6厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」結果の概要PDF https://www.mhlw.go.jp/content/001675211.pdf
  7. 7厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」第3部生活習慣調査の結果PDF https://www.mhlw.go.jp/content/001675214.pdf
  8. 8厚生労働省「健康日本21(第三次)」(令和5年5月告示) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
  9. 9スポーツ庁「第3期スポーツ基本計画」(令和4年3月閣議決定) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/1372413_00001.htm