HYROX(ハイロックス)は2017年にドイツで創設された世界標準のフィットネスレースです。「1kmランニング→ワークアウトステーション」のセットを8回繰り返し、合計8kmのランニングと8種目のファンクショナルワークアウトを完走するタイムを競います。全イベントが屋内の大型会場で開催され、天候やコースの差がない世界共通フォーマットであるため、東京でもロンドンでも同じ条件でタイムを比較できるのが最大の特徴です。2025/26シーズンには世界50カ国以上で開催され、50万人以上が参加する規模にまで成長しています。

8 STATIONSHYROX 8種目の内容と重量(Open基準)

各ステーションの内容と、Men’s Open基準の重量・距離・レップ数を解説します。全種目は世界共通の順番で固定されており、レースごとに変わることはありません。

1
スキーエルゴ|1,000m
Concept2スキーエルゴマシンで1,000mを漕ぎます。主に広背筋・上腕三頭筋・体幹が使われます。レース序盤のため飛ばしすぎてペースを崩すのが初心者の最も多いミス。ダンパー設定は5〜7が一般的です。
2
スレッドプッシュ|50m(Men’s Open: 152kg)
重量を載せたスレッドを押して50m移動します。大腿四頭筋・大臀筋・体幹が主働。会場の床面と湿度によってスレッドの滑りが変わるため、練習通りにいかないことが多い種目です。Women’s Open: 102kg。
3
スレッドプル|50m(Men’s Open: 103kg)
ロープを手繰り寄せてスレッドを引き寄せます。広背筋・上腕二頭筋・握力が主働。約1.7mの作業スペース内で後ろに下がりながら引くため、純粋な上半身の引く力に加えて下半身の踏ん張りも必要です。Women’s Open: 78kg。
4
バーピーブロードジャンプ|80m
バーピー(胸を床につける)→前方へジャンプ、を繰り返して80m進みます。全身の筋持久力・心肺機能を一気に消耗する種目。2025/26シーズンからは膝をついて立ち上がることが許可されています。重量差はなく全カテゴリー共通です。
5
ローイング|1,000m
Concept2ローイングマシンで1,000m漕ぎます。脚・背中・体幹の全身連動が求められる種目で、レースの折り返し地点にあたります。ここでペースを上げすぎると後半3種目で失速するため、安定したスプリット維持が鍵です。
6
ファーマーズキャリー|200m(Men’s Open: 2×24kg)
両手にケトルベルを持って200m歩きます/走ります。握力・僧帽筋・体幹安定性が主働。途中でケトルベルを置くことは可能ですが、置くたびにタイムロスになるため、できるだけノンストップで完走するのが理想です。Women’s Open: 2×16kg。
7
サンドバッグランジ|100m(Men’s Open: 20kg)
サンドバッグを肩に担いでウォーキングランジで100m進みます。大腿四頭筋・大臀筋・ハムストリングが主働。後半にあるため脚の疲労が蓄積した状態で行うことになり、バランスを崩しやすいのが初心者のつまずきポイントです。Women’s Open: 10kg。
8
ウォールボール|100回(Men’s Open: 6kg / 3.00m target)
スクワットしてボールを頭上のターゲットに投げる動作を100回繰り返します。大腿四頭筋・肩・体幹が主働。レース最後の種目であり、全身の筋持久力と精神力が試されます。Women’s Open: 4kg / 2.70m target / 75回。

CATEGORIESカテゴリーの選び方

カテゴリー負荷対象特徴
Open標準初心者〜中級者最も人気。初参加に最適な重量設定
Pro高い上級者・競技志向重量が大幅に増加。ランキング上位を狙う方向け
DoublesOpen/Pro準拠2人チーム2人でランニングし、種目を自由に分担(YGIG)
RelayOpen準拠4人チーム各メンバーが2ラン+2ステーションを担当
Elite 15Pro世界トップ15メジャー大会やリージョナルで予選通過した選手のみ

初参加には「Open」または「Doubles」が推奨です。Doublesは種目を分担でき、パートナーと走ることで精神的にもサポートし合えるため、HYROXの雰囲気を楽しみながら初完走を目指すのに最適なカテゴリーです。

TIME BENCHMARKS平均タイムの目安(Open)

HYROX公式データによると、2024/25シーズンのOpen部門の平均完走タイムは約1時間30分です。以下は目安として参考にしてください。

🕐 Open部門のタイム目安
完走目標(初参加):2時間以内
平均レベル:1時間20分〜1時間40分
競技志向:1時間10分以内
上位層:1時間以内
※制限時間はなし。自分のペースで完走することが最優先です。

TRAINING PLAN初心者のための準備期間とトレーニング計画

フェーズ1(1〜2ヶ月)基礎体力の構築
ランニング(週3回・20〜30分・ゾーン2心拍数)と自重トレーニング(スクワット・プッシュアップ・ランジ・プランク)を中心に基礎体力を構築します。この段階ではHYROX種目の練習はまだ不要です。1kmを5分30秒〜6分ペースで楽に走れることを最初の目標にしてください。ACSM(2009)のポジションステートメントでも、有酸素運動と筋力トレーニングの複合的な実施が40代以降の体力維持に有効であることが示されています(PMID:19516148)。
フェーズ2(2〜4ヶ月)HYROX種目の習得
ランニングを継続しながら、各ステーションの動作を練習します。スキーエルゴ・ローイング・ウォールボールは動作パターンの習得が必要で、スレッドプッシュ/プルは重量に慣れる期間が必要です。各種目を個別に練習し、正しいフォームと自分のペースを把握することがこのフェーズの目標です。ファーマーズキャリーとサンドバッグランジは握力と脚の持久力を同時に使うため、疲労した状態での練習が重要です。
フェーズ3(4〜6ヶ月)複合トレーニング
実戦形式の複合トレーニングに移行します。「1kmラン→ステーション1種目」を連続で行い、ランニング後の疲労した状態でワークアウトに入る感覚を体に覚えさせます。週2〜3回のHYROX模擬練習に加え、週1回のロングラン(5〜8km)で心肺機能を仕上げます。Psilander et al.(2013)は、持久運動と筋力トレーニングの複合的な適応がPGC-1α遺伝子の発現を促進することを示しています(PMID:23053125)。
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RACE DAYレース当日に知っておくべき実践的ポイント

シューズ選び

HYROXではランニングとファンクショナルワークアウトの両方を行うため、クロストレーニングシューズ(ランニングと筋トレの両方に対応するフラットソール系)が推奨されます。ランニングシューズだとスレッドプッシュ時にグリップが弱く、ウエイトリフティングシューズだとランニングで脚が疲労します。

水分補給とエネルギー補給

各ランニングの後に100〜150mlの水分を摂り、中盤の4〜5ステーション後にジェルやバナナなどの糖質を補給するのが効果的です。レース前2〜3時間に炭水化物中心の食事を済ませておくのが基本です。

ペース配分の考え方

初心者が最も犯しやすいミスは「序盤のランニングを速く走りすぎること」です。最初の2kmは「もう少し速く走れる」と感じるペースで抑えるのが正解。序盤を抑えた分、ステーション6〜8(ファーマーズキャリー・サンドバッグランジ・ウォールボール)で余力が残り、総合タイムが改善します。

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よくある質問

HYROXは初心者でも参加できますか?
はい、参加できます。Open部門は初心者でも完走できるように重量が設定されており、制限時間もありません。普段からジムや運動をしている方であれば、3〜6ヶ月の準備で十分に完走を目指せます。Doubles(ペア)部門は種目を分担できるため、初参加には特におすすめです。
準備期間はどのくらい必要ですか?
運動習慣がある方なら3〜4ヶ月、運動初心者なら5〜6ヶ月の準備期間を推奨します。最初の1〜2ヶ月で基礎体力を構築し、その後2〜3ヶ月でHYROX種目の練習と複合トレーニングに移行するのが安全で効果的な進め方です。
日本での開催スケジュールはどこで確認できますか?
HYROX公式サイト(hyrox.com)のイベントカレンダーで最新のスケジュールと開催都市を確認できます。日本では東京を中心に開催されており、2024年から本格的にシーズンが始まっています。
調布・東京近郊から参加する際の注意点は?
東京で開催されるHYROXイベントへは調布市から電車でアクセス可能です。前日の受付(ビブナンバー受け取り)が必要な場合があるため、スケジュールを事前に確認してください。当日はスタート3時間前には到着してウォームアップの時間を確保しましょう。

まとめ

HYROXはランニングとファンクショナルワークアウトを組み合わせた世界共通フォーマットのフィットネスレースです。

  • 1kmラン×8+ワークアウト×8=合計8kmラン+8種目
  • 全8種目:スキーエルゴ→スレッドプッシュ→スレッドプル→バーピーBJ→ローイング→ファーマーズキャリー→サンドバッグランジ→ウォールボール
  • 初参加にはOpen部門またはDoubles部門が最適
  • 平均完走タイム約1時間30分、完走目標は2時間以内
  • 準備期間は3〜6ヶ月:基礎体力→種目習得→複合トレーニングの3フェーズ
  • レース当日はクロストレーニングシューズ・序盤抑えめのペース配分が重要

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参考文献

  1. 1HYROX. “Competition Format” HYROX公式サイト。競技ルール・8種目の順番・カテゴリー分類・重量設定の一次情報として参照。
  2. 2American College of Sports Medicine; Chodzko-Zajko WJ, Proctor DN, et al. “Exercise and physical activity for older adults.” Med Sci Sports Exerc. 2009 Jul;41(7):1510-1530. ACSM公式ポジションステートメント。高齢者を含む成人に対する有酸素運動・筋力トレーニングの複合実施の有効性を体系的にレビュー。40〜60代のHYROX準備におけるトレーニング原則の根拠として参照。PMID:19516148
  3. 3Psilander N, Frank P, Flockhart M, Sahlin K. “Exercise with low glycogen increases PGC-1α gene expression in human skeletal muscle.” Eur J Appl Physiol. 2013 Apr;113(4):951-963. スウェーデン体育スポーツ大学。高度に訓練されたサイクリストにおいて、低グリコーゲン状態での運動がPGC-1α遺伝子発現を増強することを示した研究。持久+筋力の複合トレーニングによるミトコンドリア適応の根拠として参照。PMID:23053125
  4. 4厚生労働省. 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」 成人の推奨身体活動量(週150〜300分の中強度有酸素運動)の根拠として参照。HYROX準備期の有酸素運動量の設定に使用。