数値ハイライト
  • 筋力は筋量より速く落ちる:同じ人を追った研究では、筋力の低下は筋量の低下の2〜5倍速い(Mitchell 2012)
  • 40代に必要なタンパク質量:体重×1.6〜2.0g/日
  • 1食あたりの目安:25〜30g(アナボリック抵抗性がある40代では30gが目標)
  • プロテイン補充の上限目安:体重×1.62g/日で筋合成効果がプラトーに達する(Morton 2018)
2〜5倍
筋量より筋力が
速く落ちる
×1.6〜2.0g
体重あたりの
1日タンパク質目標量
25〜30g
40代が必要な
1食のタンパク質量

「40代に入ってから、同じように食べているのに体が細くなった気がする」「筋トレを始めたのに思ったより筋肉がつかない」という声は、指導現場でも年々増えています。この記事では、40代の筋力低下が起きるメカニズムを整理したうえで、「何を・いつ・どう食べるか」という食事設計の具体的な変え方を解説します。40代のタンパク質は1日何グラム必要で、1食に何グラム配るのか——まずその数字から決めます。今週から実践できる内容をそのまま使ってください。

SEC01 WHY DECLINE40代の筋力低下はなぜ食事だけでは説明できないのか

テストステロン・成長ホルモン低下と筋タンパク質合成の関係

加齢で落ちるのは筋肉の量だけではありません。Mitchell et al.(2012)は、同じ人を追った研究をまとめて筋力の低下は筋量の低下の2〜5倍速いと報告しています。つまり「体重や見た目は変わっていないのに力が出ない」は起こりうることで、量ではなく力のほうを見る必要があります。男性のテストステロンは加齢とともに下がっていきます。テストステロンは筋タンパク質合成を促進するシグナルを担っているので(Bhasin et al., 2010 / PMID:20525905 のガイドラインは、補充の効果として筋肉量・筋力の改善を挙げています)、分泌量が落ちると「同じ運動をしても筋肉がつきにくい」状態になります。女性の場合はエストロゲンの低下も加わり、40代以降の筋力維持をより困難にします。

アナボリック抵抗性とは——40代で同じタンパク質を摂っても反応が落ちる理由

40代の食事改善で最も重要な概念が「アナボリック抵抗性」です。これは「筋タンパク質合成を起こすために必要な刺激の閾値が、加齢によって上がる現象」を指します。1食20gでも筋タンパク質合成は上がりますが、上がり幅が年齢で変わります。Yang et al.(2012)が71歳の男性で測った用量反応では、安静時はホエイ20gで+65%・40gで+90%、運動後は40gが20gより大きく、著者は「若年者は運動後20gで飽和するのに対し、高齢者の運動した筋はより高い量に応答する」と書いています。40代はこの間にあたる年代なので、1食25〜30gを目安に置くのが実務的です。この25〜30gは40代を対象に測られた数字ではなく、20gでは足りない側に寄せた運用の目安です。

40代特有の「食習慣の変化」が筋力低下を加速させる4パターン

パターン 内容 筋力への影響
①1日2食化 朝を抜くと昼まで筋分解が止まらない タンパク質の1日総量が不足
②炭水化物偏重 パンやおにぎりだけではタンパク質がゼロ 週5日続けば週単位でマイナス
③外食の増加 亜鉛・マグネシウム・ビタミンDが不足 微量栄養素の慢性的不足
④飲酒頻度の増加 飲酒は筋タンパク質合成を阻害する 接待・会食増加が原因になりやすい

※ 1日2食化は昼食まで筋分解が続く状態をつくり、炭水化物偏重が週5日続くと週単位でタンパク質がマイナスになります。外食が増えると微量栄養素が慢性的に不足し、飲酒は接待・会食の増加が原因になりやすいところです。

サルコペニアとは|診断基準・5つのメカニズムと年代別の対策 運動・筋トレを休むと何日で衰えるか|落ちるタイムラインと予防策

SEC02 WHAT TO EAT40代が筋力低下を食事で改善するために必要な5つの栄養素

「タンパク質だけ増やせばいい」は半分正解で半分誤りです。筋タンパク質合成には5つの栄養素が連動しており、どれかひとつが欠けると効率が大きく落ちます。

①タンパク質——40代は1日何グラム必要か・1食の摂り方

1日の目標量:体重×1.6〜2.0g(体重65kgで104〜130g/日)。アナボリック抵抗性のある40代では、タンパク質を1食に集中させても合成が追いつきません。朝・昼・夜の3食それぞれで25〜30gを確保することが優先事項です。

食材 タンパク質量 特記
鶏むね肉(皮なし) 約23g/100g 低脂質・コスパがよい
サーモン 約22g/100g EPA・DHA・ビタミンD同時に摂れる
卵(1個) 約6g 全アミノ酸スコア100
木綿豆腐(150g) 約10g 植物性・イソフラボン含む
納豆(1パック50g) 約8g ロイシン補完・腸活
ギリシャヨーグルト(150g) 約15g 製品差が大きい・就寝前向き
ツナ缶(水煮1缶70g) 約11g 外出先・コンビニでも使える

※ 鶏むね肉・サーモン・卵・木綿豆腐・納豆・ツナ缶は文部科学省の食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)の可食部100gあたりの値から計算しています。ギリシャヨーグルトは成分表に項目がなく、無糖ヨーグルトの3.6g/100gに対して高タンパクタイプは製品差が大きいので、買う製品の栄養成分表示で確かめてください。

タンパク質が多い食べ物ランキングTOP30

②ビタミンD——筋合成・テストステロン産生に直接関与。日本人の大多数が不足

ビタミンDは日本人で不足しやすい栄養素として扱われています。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ビタミンDに推奨量は設定されておらず、目安量と耐容上限量だけが示されています。食事から摂る分と日光で皮膚でつくられる分の両方で決まるため、1日何μgと言い切れないからです。週3回以上の魚食が難しい場合は、サプリでの補充を検討する価値があります。自分の年齢区分の目安量と上限は、同基準で確認してください。

食材 ビタミンD量(100gあたり)
サーモン 約32μg
さんま 約19μg
いわし 約18μg
干ししいたけ 約17μg
卵黄 約3μg

③ロイシン(BCAA)——筋タンパク質合成のスイッチを入れる量と含有食材

ロイシンはmTORC1シグナル経路を活性化し、筋タンパク質合成を「起動」させるトリガーとなる必須アミノ酸です。何グラム必要かという閾値そのものは確立していませんが、タンパク質の量を増やすとロイシンも一緒に増えるので、実務では量で管理します。Yang et al.(2012)が高齢男性で測った用量反応では、安静時はホエイ20gで筋線維タンパク質合成が基礎値比+65%、40gで+90%で、10g以下では有意に上がりませんでした。植物性タンパク質はロイシンの密度が低いので、動物性食品かプロテインを1食に組み合わせると乗りやすくなります。

食材 1食分量 ロイシン量
鶏むね肉 150g 約2.7g
卵 3個 約1.7g
木綿豆腐 200g 約1.2g
ホエイプロテイン 30g 約2.8g

※ 鶏むね肉・卵・木綿豆腐は文部科学省の食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)の可食部100gあたりのロイシン量から計算した値です(鶏むね肉 皮なし 生1,800mg、鶏卵 全卵 生1,100mg、木綿豆腐600mg)。ホエイプロテインは成分表に項目がないため、製品の栄養成分表示の例です。

④クレアチン——40代以降の筋力・筋持久力改善に最もエビデンスが蓄積されているサプリメント

40代以降は筋肉中のクレアチン貯蔵量が低下します。筋力向上・除脂肪体重増加・筋疲労回復への効果は栄養補助食品の中で最もエビデンスが豊富であり、中高年を対象にした研究でも有効性が確認されています。標準的な使用量は1日3〜5gで、クレアチンモノハイドレートが最もコスパ良く摂れる形態です。

⑤亜鉛・マグネシウム——テストステロン産生と睡眠中の筋回復を支える微量栄養素

栄養素 役割 主な食材
亜鉛 テストステロン産生の補酵素 牡蠣・牛肉・豚レバー・カシューナッツ
マグネシウム 酵素反応・睡眠の質・筋合成 豆腐・ほうれん草・ナッツ・玄米

※ 1日の摂取量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で年齢区分(18〜29/30〜49/50〜64/65〜74/75歳以上)と性別ごとに定められています。亜鉛とマグネシウムはどちらも推奨量が設定されている栄養素です。自分の区分の数値はそちらで確認してください。

筋トレ効果を上げる食事の基本|PFC・タイミング・1日メニュー
【根拠】SEC02で解説した通り、40代のアナボリック抵抗性を克服するには1食25〜30gのタンパク質確保が優先です。Morton et al.(2018)のメタ分析でも、タンパク質補充は筋力・筋肉量の増加を有意に強化することが49研究・1,863名のデータで示されています(体重×1.62g/日が効果のプラトー目安)。ただし同じ研究は「補充による除脂肪体重の増加は加齢とともに小さくなる(−0.01kg/年)」とも報告しています。年齢が上がるほどサプリ1つで埋まる幅は狭くなるので、まず食事側で1食25〜30gを満たすのが前提です。忙しい40代が毎食25〜30gを食事だけで確保しようとすると準備負担が高くなります。特にロイシンの密度が高いホエイ・カゼインプロテインは、食事で足りない分を補う現実的な手段です。国産素材・品質管理が厳しいものを選ぶことで安心して継続できます。
【デメリット】 プロテインはあくまで食事でのタンパク質摂取が不足する場合の補助です。食事で十分なタンパク質(体重×1.6〜2.0g/日)を摂れている方には追加の効果は限定的です。乳成分アレルギーの方はソイプロテインへの切り替えを検討してください。
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SEC03 WHEN & HOW筋力改善に効く「食事タイミング」と「食べ方の設計」

1食何グラムを3食に分けるか——25〜30gずつ分散させる理由

アナボリック抵抗性がある40代では、タンパク質を1食に集中させても吸収・合成が追いつきません。「夜だけ大量に食べる」より、3食に均等分散させるほうが筋合成の総量が増えることが研究で示されています。

食事 タンパク質量 食材例(体重65kg・1日104g)
朝食 30g 卵2個+ギリシャヨーグルト+プロテイン
昼食 35g 鶏むね150g+豆腐100g
夕食 30g 魚150g+納豆1パック
就寝前 10g ギリシャヨーグルトかカゼイン

※ ギリシャヨーグルトは朝150g・就寝前100g、プロテインは1杯を想定しています(体重65kg・1日104gの配分)。

筋トレ後30〜60分以内の食事設計

筋トレ直後はmTORC1シグナルが活性化されており、タンパク質を摂取したときの筋合成効率が最も高い時間帯です。糖質を一緒に摂ることでインスリンが分泌され、タンパク質の筋肉への取り込みが促進されます。「プロテインだけ飲む」より「プロテイン+糖質」のほうが合成効率が高いです。

朝食が最も重要な理由——夜間断食後の筋分解を止める朝のタンパク質設計

就寝中は6〜8時間タンパク質摂取がゼロの状態が続き、起床時には筋タンパク質分解(カタボリック)が優位になっています。朝食でタンパク質を摂ることでこの分解を止め、合成モードに切り替えるのが「朝食の最重要ミッション」です。

朝食3分設計の例:前日夜にゆで卵を3〜4個まとめて茹でておく / ギリシャヨーグルト1パックを冷蔵庫に常備。上記2つを食べるだけでタンパク質約22〜28gを確保できます。

就寝前カゼイン摂取——睡眠中の筋合成を維持する具体的方法

カゼインとホエイは血中アミノ酸の立ち上がり方が違います。Tipton et al.(2004)が抵抗運動の1時間後に20gを摂らせた研究では、どちらも筋タンパク質の収支をマイナスからプラスに変え、その大きさは同程度でした(ロイシンのピークはホエイのほうが高く、摂取量に対する取り込みは両者10〜15%)。吸収の速いホエイはトレーニング直後、ゆっくり出てくるカゼインは食間や就寝前と使い分けるのが一般的ですが、就寝前に摂った場合の睡眠中の合成はこの研究では測られていません。

食品(就寝30〜60分前) タンパク質
ギリシャヨーグルト150〜200g 15〜20g
カッテージチーズ150g 約15g
カゼインプロテイン1杯 約25g
体脂肪率を落とすための食事タイミング実践ガイド 筋トレに必要な睡眠時間|何時間寝れば筋肉は育つか

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SEC04 FOODS TO AVOID40代の筋力低下を加速させる「食習慣のNG」——年代特有の視点で見直す

NG①

過度な糖質制限——アナボリック抵抗性がある40代で糖質を削ると起きること

糖質不足の状態では体が筋タンパク質をエネルギーとして分解し始めます(糖新生)。また糖質はインスリン分泌を通じてタンパク質の筋肉への取り込みを助けているため、糖質を極端に削るとタンパク質を摂っても合成効率が落ちます。GIの低い食品(玄米・さつまいも・オートミール)を中心に適量を確保することが40代では重要です。

NG②

週3回以上のアルコール摂取——筋タンパク質合成阻害のメカニズム

アルコールはmTORC1シグナルを阻害し、筋タンパク質合成を下げることが研究で示されています。さらにテストステロンの合成を抑制し、睡眠の後半での成長ホルモン分泌を妨げます。週1〜2回の少量であれば大きな問題になりにくいですが、週3〜5日の飲酒が習慣化している場合は筋力低下の主要因になっている可能性があります。

NG③

極端なカロリー制限——40代の筋タンパク質合成閾値の上昇と相乗して悪化

カロリーが不足すると体は筋肉を分解してエネルギーを確保します。40代はアナボリック抵抗性により筋合成の感受性が元々低下しているため、カロリー不足の影響をより強く受けます。筋力低下を改善しながら体脂肪を落とすには、タンパク質を確保しながら糖質・脂質を緩やかに調整することが必要です。

NG④

超加工食品の常食——慢性炎症が筋タンパク質合成を妨げるメカニズム

ウインナー・カップ麺・菓子パン・ファストフードなどの超加工食品には、トランス脂肪酸・食品添加物(リン酸塩など)が含まれており、慢性的な低レベル炎症を引き起こします。慢性炎症は筋タンパク質合成を阻害するサイトカイン(TNF-α・IL-6など)の分泌を促進するため、筋力低下を間接的に加速させます。

筋トレ効果が出ない食習慣7選|筋肥大を妨げるNG食品と年代別注意点

SEC05 WEEKLY PLAN今週から始める「筋力改善のための1週間食事設計」

共通ルール:①タンパク質総量:体重×1.6g以上 ②食事回数:最低3食(朝食を抜かない) ③1食あたりタンパク質25〜30g以上 ④就寝前:カゼイン系タンパク質10〜20g(ギリシャヨーグルト推奨) ⑤魚の頻度:週3回以上
パターンA:自炊メイン(週3日の実践例)

月曜日(筋トレ日想定)

食事 メニュー タンパク質
朝(7時) ゆで卵2個+ヨーグルト+オートミール 約32g
昼(12時) 茹で鶏+玄米+ほうれん草炒め 約37g
筋トレ後(19時) サーモン+さつまいも+豆腐のみそ汁 約35g
就寝前(22時) ギリシャヨーグルト150g 約15g
合計   約119g

水曜日(休養日)

食事 メニュー タンパク質
朝 スクランブルエッグ+木綿豆腐+牛乳 約31g
昼 豚もも肉+キャベツ炒め+玄米 約34g
夕食 いわし2尾+冷奴+納豆+みそ汁 約30g
就寝前 カッテージチーズ150g 約16g
合計   約111g
パターンB:外食・コンビニ多め(選び方の基準と組み合わせ方)

コンビニで1食30g確保する組み合わせ例

組み合わせ タンパク質
サラダチキン+ゆで卵2個+牛乳 約38g
おにぎり+サラダチキン+ヨーグルト 約33g
冷凍枝豆+サバの塩焼き+納豆 約30g
外食での選び方:主食+主菜(肉か魚)+副菜の定食形式を選ぶ。丼もの単品は避ける。さば定食・さけ定食を優先(ビタミンDも同時確保)。
パターンC:忙しい平日(時短で1食25g以上を確保する最小設計)

調理時間5分以内で実現できる高タンパク食事

食事 設計 タンパク質
朝(3分) 前日茹でたゆで卵2〜3個+ヨーグルト 22〜28g
昼(5分) サラダチキン+インスタント味噌汁 約30g
夜(10分) 作り置きの茹で鶏+納豆2パック+みそ汁 約33g

※ 分量の目安です。ヨーグルトはギリシャヨーグルト150g(時短は1パック)、オートミール50g、玄米200g、鶏むね肉・豚もも肉・サーモンは各150g、豆腐・冷奴は150g、牛乳200ml、サラダチキンは1袋、冷凍枝豆100g、鶏むね肉の作り置きは冷蔵で3〜4日もちます。

筋肉を守る食材10選|30〜60代のタンパク質不足とサルコペニア予防
【根拠】SEC05の1週間食事設計で示した通り、40代が毎食25〜30gのタンパク質を確保するには食事の準備に一定の手間がかかります。特にパターンC(時短設計)でも「毎日続けるのは大変」と感じた方は多いはずです。高タンパク弁当の宅食サービスは、PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)が計算済みで届くため「何を食べるか考えなくていい」状態をつくれます。「食材・調理・計算の手間」を外注することで、忙しい40代が週3〜4日を宅食に置き換えるだけで1日のタンパク質目標をクリアしやすくなります。
【デメリット】 継続的なコストがかかります(1食あたり700〜1,200円程度)。また冷凍保存のため食感・風味が自炊と異なる場合があります。食事の多様性を確保するために宅食だけに頼らず、外食・コンビニと組み合わせて使うことを推奨します。
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SEC06 SELF CHECK「食事を変えているのに筋力が戻らない」3つの落とし穴

落とし穴①

タンパク質量の計算が「食品重量」と「タンパク質量」で混同している

最もよくある誤解は、「鶏むね肉100gを食べたからタンパク質100g摂れた」という勘違いです。鶏むね肉100gのタンパク質含有量は約23gです。「あすけん」などのアプリで1週間だけ実際の摂取量を記録することで、「思っていたより摂れていなかった」という事実が見えてきます。

落とし穴②

食事は変えたが筋トレ刺激がゼロで筋合成スイッチが入っていない

食事でタンパク質を摂っても、筋肉への物理的な刺激(筋トレ)がなければ筋タンパク質合成は活性化しません。mTORC1は「運動刺激×アミノ酸」の両方が揃ったときに最も強く働きます。食事の改善で筋力低下の進行を遅らせることはできますが、筋力を積極的に取り戻すためには運動刺激が必要です。

40代からの筋トレ|ケガしない始め方と週2回で続くメニュー設計
落とし穴③

睡眠の質が低く、夜間の筋合成が阻害されている

成長ホルモンは睡眠と結びついて出ます。Van Cauter & Plat(1996)によると、成人でもっとも再現性の高い分泌のパルスは入眠直後、最初の深いノンレム睡眠(徐波睡眠)に一致して起こり、男性ではパルスの約70%が徐波睡眠と重なって、そのときの分泌量は徐波睡眠の量と相関します。そして同じ総説は、30歳から40歳の10年間で24時間の成長ホルモン総分泌量が2〜3倍減り、徐波睡眠の量も同じ年齢幅で大きく減ると報告しています。40代に多い「寝てもすっきりしない」は、ここに重なっています。食事とトレーニングを整えても、眠りの前半が崩れていれば回復の土台が削られます。

筋トレに必要な睡眠時間|何時間寝れば筋肉は育つか
指導現場18年の気づき:40代以降で「食事を変えて最初に気づく変化」は筋肉量の増加よりも先に「疲れにくくなった」「朝の体の重さが消えた」という体感の変化であることがほとんどです。筋肉の変化は数値に出るまで1〜3ヶ月かかりますが、タンパク質と微量栄養素が整い始めると、エネルギー代謝や睡眠の質の改善が先に体感として現れます。

よくある質問(FAQ)

📖 もっと具体的に実践したい方へ

【月2回更新・第1土曜と第3土曜】理想の体と健康を最短で手に入れる実践ノウハウをお届けする月額限定マガジンです。900記事以上の執筆実績とデータに基づき、ネットの一般論では成果が出なかった方へ「今日からマネできる具体的な食事・筋トレプラン」を配信。買い切り版もご用意しています。

 
 
40代で食事だけで筋力は戻せますか?筋トレは必須ですか?
食事の改善だけでは「筋力低下の進行を遅らせる」「筋肉の質を維持する」ことは可能ですが、筋力を積極的に取り戻すには筋トレによる物理的刺激が必要です。ただし週2回・30分程度の軽い筋トレでも、食事改善と組み合わせることで大きな効果が出ます。
プロテインサプリは必要ですか?食事だけでは足りませんか?
食事だけで体重×1.6gのタンパク質を確保できるのであれば、サプリは必須ではありません。ただし忙しい40代が毎食25〜30gを食事だけで確保しようとすると食事の準備負担が高くなります。プロテインは「食事で足りない分を補う道具」として1日1〜2杯を活用するのが現実的です。
タンパク質を増やしたら太りませんか?
タンパク質は糖質・脂質と比べて体脂肪になりにくい栄養素です(食事誘発性熱産生が高く、摂取カロリーの一部が消化吸収に使われる)。体重×1.6〜2.0gの範囲でタンパク質を増やす場合、総カロリーをコントロールしていれば体脂肪増加の心配はほぼありません。
筋力低下の改善にどのくらいの期間がかかりますか?
食事改善を始めて「体感の変化(疲れにくさ・朝の目覚め)」は早ければ2〜4週間で現れます。筋肉量・筋力の数値的な変化は、食事+週2回の筋トレを続けて1〜3ヶ月が目安です。40代は20代より反応が遅いため、「3ヶ月続けてから判断する」という設定が現実的です。
女性と男性で食事の設計は変わりますか?
基本的なタンパク質量・タイミング・食材の考え方は共通です。女性の場合は40代からのエストロゲン低下により骨密度低下リスクも高まるため、カルシウム(乳製品・小魚)とビタミンDの確保をより意識することをおすすめします。また女性は鉄不足になりやすいため、赤身肉・レバー・ほうれん草を意識的に取り入れると筋回復に効果的です。
この記事は、筋トレの本場ロサンゼルスで15年の指導経験を持ち、NABBA 2025 GPF優勝・LA Championship 2位・NESTA-PFT/SFT取得のトレーナーが、調布市のパーソナルジムTHE FITNESSで執筆しています。18年間で延べ1,000名以上の食事・トレーニング設計を担当。「食事を変えることが最初の一手」という考えのもと、毎日の食卓から始める筋力改善を専門としています。ロサンゼルス15年+日本3年・計18年指導経験 ・ NABBA 2025 GPF優勝 ・ LA Championship 2位

まとめ40代の筋力低下は食事から変えられる——今日・今週・1ヶ月後にやること

40代の筋力低下は「食べる量が少ない」という単純な問題ではなく、ホルモン低下×アナボリック抵抗性×食習慣の変化が重なった複合問題です。だからこそ、対策も「タンパク質を少し増やす」だけでなく、量・質・タイミング・分散の4点を同時に整える必要があります。

今日やること:夕食の主菜に手のひら1枚分(約150g)の魚か肉を加えてください。鶏むね・サーモン・いわしのどれかを選べばビタミンD・タンパク質・良質な脂質が一度に摂れます。

今週やること:朝食にゆで卵2個とギリシャヨーグルト150gを加えてください。準備時間は0分(前日に茹でておく)。これだけで朝のタンパク質が20〜25g確保でき、夜間断食後の筋分解を止められます。

1ヶ月後に確認すること:体重計の数値よりも、「疲れにくくなったか」「朝の目覚めが変わったか」「同じ動作で体が軽く感じるか」を確認してください。体感の変化が食事改善の継続を支えてくれます。
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関連記事

参考文献

  1. 1Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, et al. "A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults." Br J Sports Med. 2018;52(6):376-384. doi:10.1136/bjsports-2017-097608. 49研究・1,863名を対象としたメタ分析。タンパク質補充が筋力・筋肉量増加を有意に強化すること、および体重×1.62g/日が効果のプラトーの目安であることを示した。 PMID:28698222
  2. 2Tipton KD, Elliott TA, Cree MG, Wolf SE, Sanford AP, Wolfe RR. "Ingestion of casein and whey proteins result in muscle anabolism after resistance exercise." Med Sci Sports Exerc. 2004;36(12):2073-2081. doi:10.1249/01.mss.0000147582.99810.c5. カゼインとホエイプロテインを抵抗運動後に摂取した場合の筋タンパク質合成への影響を比較。両プロテインとも筋合成を有意に促進することを示した。 PMID:15570142
  3. 3Bhasin S, Cunningham GR, Hayes FJ, et al. "Testosterone Therapy in Men with Androgen Deficiency Syndromes: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline." J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(6):2536-2559. doi:10.1210/jc.2009-2354. 男性のアンドロゲン欠乏症に関する米国内分泌学会の臨床ガイドライン。症状と低値がそろった場合にテストステロン補充を推奨し、その効果として筋肉量・筋力・骨密度・性機能の改善を挙げている。 PMID:20525905
  4. 4Mitchell WK, Williams J, Atherton P, Larvin M, Lund J, Narici M. “Sarcopenia, dynapenia, and the impact of advancing age on human skeletal muscle size and strength; a quantitative review.” Front Physiol. 2012;3:260. doi:10.3389/fphys.2012.00260. 加齢による筋量と筋力の低下速度を横断研究と縦断研究に分けて集計した総説。横断研究の筋量減少率の中央値は男性0.47%/年・女性0.37%/年、縦断研究では75歳で筋力が男性3〜4%/年・女性2.5〜3%/年。同じ集団で両方を測った研究では筋力の低下が筋量の低下の2〜5倍速いことを示す。 PMID:22934016
  5. 5Van Cauter E, Plat L. “Physiology of growth hormone secretion during sleep.” J Pediatr. 1996;128(5 Pt 2):S32-7. doi:10.1016/s0022-3476(96)70008-2. 睡眠と成長ホルモン分泌の時間的な関係を整理した総説。成人で最も再現性の高い分泌パルスは入眠直後の最初の徐波睡眠に一致し、男性ではパルスの約70%が徐波睡眠と重なる。30歳から40歳の10年間で24時間の成長ホルモン総分泌量が2〜3倍減ることも報告している。 PMID:8627466
  6. 6Yang Y, Breen L, Burd NA, Hector AJ, Churchward-Venne TA, Josse AR, Tarnopolsky MA, Phillips SM. “Resistance exercise enhances myofibrillar protein synthesis with graded intakes of whey protein in older men.” Br J Nutr. 2012;108(10):1780-8. doi:10.1017/S0007114511007422. 高齢男性37名(71±4歳)にホエイプロテイン0・10・20・40gを摂らせた用量反応試験。安静時は20gで筋線維タンパク質合成が基礎値比+65%・40gで+90%、10g以下では有意に上がらず、運動後は40gが20gを上回った。若年者が運動後20gで飽和するのに対し、高齢者の運動した筋はより高い量に応答すると結論している。 PMID:22313809